向かいの人はちょっと間を置いて、それから口を開いた。「……人命に関わるものは、保釈措置を取ることはできません。彼は寺田さんが保釈されたら逃げてしまうのではないかと心配しているのです。」
逃げる……
寺田真治は眉をひそめた。
このような命令は、普通の女の子に下されるべきではない。むしろ、死刑囚や殺人犯に下されるようなものだ!
彼らが逃げる機会を見つけることを恐れ、一度拘束したら24時間拘留し、絶対に逃がさない。
自分の従妹は一体何者なのか?
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警察署の取調室は冷たく、周りは全て金属製の壁と大きな扉だった。
二人の警官が向かいに座っている女性を見つめ、一人がゆっくりと口を開いた。「寺田さん、あなたが認めなくても、あの老いぼれさんの命は風前の灯です。彼に何かあれば、あなたも楽ではすみませんよ!」
しかし、連れて来られた女性は取調室の椅子に寄りかかり、頭を傾けて目を閉じ、居眠りをしているようだった。
二人の警官は互いに顔を見合わせ、一人が思わず眉をひそめた。「わかっています。時間稼ぎをしているのですか?寺田家の弁護士が来て保釈してくれるのを待っているのですか?でも、たとえそうだとしても、家族の命を危険にさらしたのに、何も言うことはないのですか?」
警官として、この金持ち家庭の子供たちが人命を軽視することが最も嫌いだった。
二人の警官はとても正義感が強かった。
彼らは老いぼれが救急車で運ばれるのを目の当たりにし、寺田家の家政婦や使用人たちが寺田凛奈が老いぼれの治療を主張したと言うのを聞いた。
さらに、彼らは老いぼれの住まいで長い銀針を見つけた。
鍼治療は誰もが聞いたことがある漢方医学だ。
でも、あんなに長いのは見たことがない……
特に石山が特別に指示したのは、寺田凛奈が人命に関わる事態に巻き込まれたら、必ず拘留して監視するということだった。
これは、彼女が絶対に危険人物であることを意味している。
そのため、二人は凛奈を厳しい目で見つめた。「寺田さん、私たちの調査に協力してください!」
寺田凛奈はまだ何も言わなかった。
そのとき、彼女はドアの所で足音を聞いた。