この言葉が出るや、廊下全体が静まり返った。
全員が手術室の入り口に目を向けた。そこには寺田凛奈が手術着姿で立っていた。顔ははっきりと見えないにもかかわらず、皆は彼女から「落ち着いた」という四文字を感じ取った。
彼女は話しながら手袋を外し、手袋を脱いだ後、何気なく手術帽とマスクを取り外した。長い髪が肩に落ち、妖艶な顔立ちが露わになった。
マスクと帽子がきつかったせいで、頬には二本の赤い痕が残っていて、少し滑稽に見えたが、今この瞬間誰も笑う余裕はなかった。
なぜなら、彼女の眼差しは冷たく無感情で、髪の毛一本一本までが手術時の真剣さを物語っていたからだ。
藤本凜人は彼女を見つめ、なぜか誇らしい気持ちが湧き上がってきた。彼はゆっくりと口元を緩めた。
一方、寺田真治の狐のような目には、今や賞賛の色が加わっていた。