第360章 私がAntiです!

石山博義の表情が曇った。

  脱獄という話になると、事態は深刻になる。

  確かに寺田凛奈は脱獄したのだが、それは彼にとって面目を失うことだった。

  しかし、彼が当時同意しなかったのは、これが寺田凛奈の言い訳にすぎないと思ったからだ。結局のところ、多くの医者でさえ救えなかった人を、彼女がどうして救えるというのだろうか?

  しかし、病院に向かう途中で、彼は老いぼれの症例を詳しく調べた。

  一部の文字は読みづらかったが、老いぼれが助からないことは理解できた!

  しかし先ほど、老いぼれは呼吸が安定し、ICU病室に移されて観察中だった。これは生き延びたということであり、彼が以前寺田凛奈を軽視し、誤解していたことを示していた!

  さらに、血液中の未知の成分もあり、すべてが彼が寺田凛奈を誤解していたことを示していた……

  謝罪の気持ちと、この女性が迅速に判断し、果敢に脱獄して一命を救ったことへの敬意から、石山博義は目を伏せ、この件を隠蔽することを決めた。

  彼は足を止め、質問したレポーターを見た。「寺田さんは脱獄していません。彼女は患者を治療しに来たのです」

  「患者を治療する?」そのレポーターは冷笑した。「彼女に治療ができるなら、どうしてこんな重大な医療事故を起こすことがあるでしょうか!石山さん、あなたは寺田家と藤本家と結託しているんでしょう?だからこんな下手な言い訳をしているんじゃないですか!」

  他のレポーターたちもすぐに質問を始めた。「どういうことですか?これは一体どういうことなんですか?理論的に言えば、寺田さんが治療で問題を起こしたのなら、患者と隔離されるべきではないですか?もし患者が彼女に脅迫されたらどうするんですか?」

  そのレポーターはすぐに口を開いた。「どうして脅迫されるんですか?患者は狂人で、精神状態が正常ではありません。今も手術室のベッドに横たわったままで、目覚めていません。彼に拒否する権利も、脅迫される可能性もないでしょう?警察の仕事のやり方があまりにも規則を守っていないですね!」

  「他の医療関係では、医者と患者を隔離するのに、どうして寺田さんの場合は、手術室に行かせたんですか?」