この言葉が出るや否や、部屋にいた全ての使用人たちが一斉に寺田雅美を見つめた。
寺田雅美は目を見開き、緊張で身体を硬直させた。彼女は深呼吸をし、落ち着いた声で言った。「三原さん、これは私の蚊よけ薬ではありませんか?なぜこれを持っているのですか?」
蚊よけ薬?
三原耀子は呆然とした。
電光石火のごとく、彼女は全てを理解した!
彼女は驚愕して薬を見つめ、再び寺田雅美を見た。その瞬間、頭の中が真っ白になった。
目の前のこの女性は、彼女の印象に残っていた優しく大方で、思いやりのあるお嬢様なのだろうか?
どうして嘘をつけるのか...どうして嘘をつくことができるのか!
彼女ははっきりと自分に莫愁丸だと言い、老いぼれに渡すように言ったのに、あやうく老いぼれの命を奪うところだった!