この言葉が出るや否や、部屋にいた全ての使用人たちが一斉に寺田雅美を見つめた。
寺田雅美は目を見開き、緊張で身体を硬直させた。彼女は深呼吸をし、落ち着いた声で言った。「三原さん、これは私の蚊よけ薬ではありませんか?なぜこれを持っているのですか?」
蚊よけ薬?
三原耀子は呆然とした。
電光石火のごとく、彼女は全てを理解した!
彼女は驚愕して薬を見つめ、再び寺田雅美を見た。その瞬間、頭の中が真っ白になった。
目の前のこの女性は、彼女の印象に残っていた優しく大方で、思いやりのあるお嬢様なのだろうか?
どうして嘘をつけるのか...どうして嘘をつくことができるのか!
彼女ははっきりと自分に莫愁丸だと言い、老いぼれに渡すように言ったのに、あやうく老いぼれの命を奪うところだった!
寺田雅美は一歩後退した。「三原さん、あなた、なぜそんな目で私を見るのですか。」
なぜそんな目で彼女を見るのか...
三原さんは深呼吸をし、突然決心をした。
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寺田凛奈が目覚めたとき、外はすでに明るくなっていた。
彼女はゆっくりと目を開け、頭に針で刺されるような痛みを感じた。眉をひそめ、指で軽く押さえようとしたとき、力強く温かい大きな手が彼女の頭に触れ、優しくマッサージを始めた。
痛みがゆっくりと和らぎ、彼女の眉間もようやく緩んだ。彼女はマッサージをしてくれた男性を見た。
藤本凜人はまだ昨日と同じ服を着ていた。一晩中帰らなかったようだ。
一晩中眠っていなくても、この男性は少しも疲れた様子を見せず、ただ目尻に少し疲れが見えるだけだった。
尋問室の薄暗い灯りの下で、あのほくろは普段の鋭さを失い、魅惑的に見えた。
彼女は無意識のうちに、昨日この男性が石山博義を人質にして彼女を逃がそうとした場面を思い出した。彼女は伸びをしながら立ち上がり、何気なく尋ねた。「昨日、私が逃げることを恐れなかったの?」
藤本凜人は笑いながら彼女を見た。「あなたは逃げないでしょう。」
寺田凛奈の伸びをする動作が止まった。「なぜ?子供のため?」