この言葉を聞いて、寺田雅美は唇を噛んだ。
彼女は寺田真治を見た。
男は落ち着いてオフィスデスクの後ろに座り、両手をデスクの上に置いていた。いつも笑顔を浮かべている目は、しかし深遠そのものだった。
彼が彼女を見つめると、寺田雅美は全身の服を脱がされたような感覚に襲われた。その目は人の心を見透かすようで、しかし彼の考えを推し量ることはできなかった。
寺田雅美は頭を下げた。「お兄さん、私が間違っていたことを認めます。あんな薬を買って帰ってきて、部屋に置いておいたのは良くなかった。三原さんに盗まれてしまったし。でも、私は本当に法律を破っていません。泥棒が私の毒を盗んで他人に害を与えたからといって、薬を買った私が罪に問われるわけがないでしょう?」
寺田真治は狐のような目を細めた。
彼は冷笑した。「雅美、君を呼んだのは君の過ちを認めさせるためだと思っているのか?違うよ。」
寺田雅美は驚いた。そして男の深みのある声がゆっくりと聞こえてきた。「私は警察官ではない。人を裁くには証拠が必要だ。君に何かを認めさせる必要もない。君も私も心の中ではわかっているはずだ。」
その声は穏やかだったが、まるで地獄からのものだった。寺田雅美の心は少しずつ沈んでいった。
寺田真治は立ち上がった。「証拠がないから、君を警察に引き渡すことはない。それに、君は三叔父の娘だ。君をどう扱うかは、三叔父が目覚めた後で決めることになる。ただし、この期間、家のことは君に任せない。」
この言葉に寺田雅美は突然顔を上げて彼を見た。
寺田亮の法的に唯一の娘として、寺田雅美の家での地位は常に高かった。
法的には、彼女は寺田真治のような甥よりも寺田亮との関係が密接だった。
そのため、寺田真治が会社の事を管理し、家のことは全て寺田雅美が管理していた。三原耀子という内管理人でさえ、彼女の手伝いに過ぎなかった。
寺田治が彼女をあれほど嫌っていたのに、なぜ彼女に何度も負けていたのか?それは彼女が財政の実権を握っていたからだ!
今、寺田真治は彼女の権利を奪おうとしているのか?