第350章 大師姉も来ていない~

「石山さん、採血が終わりました。」

 法医学者は老いぼれの血液サンプルを持って、石山博義の前に来て、恭しく報告した。

 石山博義は両手を背中で組み、標準的な軍人の立ち姿勢をとっていた。彼は頷いた。「検査所に送って、すぐに血液サンプルを調べてください。最近薬物を服用したかどうか確認してください!何か異常があれば、すぐに私に知らせてください。」

 「はい。」

 数人の法医学者は命令を受けて急いで去っていった。石山博義は手術室を見つめていた。

 今の彼は実際、老いぼれの生死にはあまり関心がなく、寺田凛奈が無免許で医療行為をしたかどうかにも関心がなかった。これが医療事故かどうかも気にしていなかった。彼が気にしているのは……

 「石山さん、あなたたちはちょっと大げさすぎるんじゃないですか?」寺田真治が近づいてきて、態度は高慢でも卑屈でもなく話した。

 石山博義は彼を見て、口調を少し丁寧にした。「寺田家の事件ですから、重視しないわけにはいきません。寺田さんを冤罪に陥れるわけにはいきませんからね。」

 寺田真治は顔に笑みを浮かべたが、狐のような目には疑念と不明が満ちていた。「寺田家の面子のためじゃないでしょう?」

 石山博義はまだ背筋を伸ばしたまま、前方を見つめ、全体的に非常に厳格で真面目な様子だった。彼は頷いた。「寺田さんの言葉の意味がわかりません。寺田さんは厳密な調査を望まないのですか?」

 寺田真治は眉をひそめた。

 今でも、彼は寺田凛奈に問題がないと確信していた。精神病患者を治療しただけで、治せなくても人を死なせるはずがない。

 きっと何か誤解があるに違いない。

 彼は姿勢を正した。「もちろんそんなことはありません。寺田家は決して犯罪者を庇いません。」

 石山博義は頷いた。「寺田家のしつけは昔から厳しいですからね。」

 寺田真治は石山博義を見つめた。

 実際、二人はすでに交流があった。以前の石山博義も非常に几帳面だったが、本質的には頑固な人間ではなかった。

 寺田家や藤本家とも仲が悪くなかった。

 しかし、今回の事件で、彼が一切口を開かないとは思わなかった。