寺田洵太の動きは非常に素早く、凛奈の面具を取り外そうとしているところだった。寺田凛奈が対応しきれなくなったその瞬間、大きな手が突然彼女の腰を抱き、二歩後ろに引っ張った。彼女は直接男性の胸に倒れ込んだ。
馴染みのある男性ホルモンの香りに、寺田凛奈は一瞬驚いた。
振り返ると、藤本凜人が彼女を見つめているのが見えた。腰から手を素早く離すと、男性は低い声で言った。「どういたしまして。」
寺田凛奈:「……」
彼女は実は感謝する気はなかった。
彼女は体を正し、寺田洵太を見た。「何をしているの?」
寺田洵太は面具を外さず、少し残念そうに言った。「大師姉、すみません。ただあなたの素顔を見たかっただけです。」
先ほど近づいてきたとき、珍しく大師姉が気を取られていて、何か考え事をしているようだったので、これが最高のチャンスだと思った。
しかし、邪魔されるとは思わなかった。
彼は黒い面具をつけた藤本凜人を睨みつけずにはいられなかった。
重要な瞬間に、何を愛情表現してるんだ?
家の中で抱き合うのはいいけど、こんな人前でそんなことをするなんて、彼が彼女がいない独身だと思ってるのか?
彼は口をへの字に曲げ、藤本凜人を無視したが、寺田凛奈には非常に敬意を表した。「大師姉、この前の二日間はどうしてこなかったんですか?」
寺田凛奈:?
私が何をしていたか、あなたは知っているはずでしょう?
彼女は唇を曲げて笑った。「用事があったの。」
寺田洵太はうなずいた。「ちょうど私も用事がありました。従妹が誣告されたので、助けに行きました。そういえば、大師姉、今日の試合はまだ行うんですか?」
「もちろん。」
寺田凛奈は二つ返事で同意した。
寺田洵太は辺りを見回した。
寺田凛奈は尋ねた。「誰か探してるの?」
寺田洵太はうなずいた。「外で従妹の車を見かけたんです。どこで聞いたのか知りませんが、彼女もここに遊びに来たみたいです。規則を知らずに知らない人を怒らせてしまうかもしれないので、心配で探しているんです。どこに隠れているのかわかりませんが。」
寺田凛奈:「……」