寺田凛奈は地下闘技場に入り、飲食エリアで直接藤本凜人を見つけた。
小さな女の子を抱いている男性は、あまりにも目立ちすぎていた。
彼女が近づくと、銀のマスクをつけた寺田芽が柔らかい声で話し始めた。「ママ、何日も会えなかったわ。寂しかったの〜あなたを見ると、全身に力がみなぎるわ!」
寺田凛奈:「……」
彼女は口角をピクリと動かし、芽がさらに話そうとしているのを見て、すぐに口を開いた。「黙りなさい」
寺田芽はすぐに大人しく口を閉じた。
寺田凛奈は歩み寄り、ソファに身を投げ出すと、そこに寄りかかって目を閉じた。今夜は寺田雅美が病院に行くのを待つために、昼間からずっと寝ていなかったのだ。
目を閉じても、芽が藤本凜人に耳打ちしているのが聞こえた。「パパ、見た?十分に寝てないママはとても怖いの。この時は絶対に怒らせちゃダメよ!」
藤本凜人:「……どれくらい怖いの?」
寺田芽は小さな声で話し始めた。「私が小さい頃、わからずに一度ママを起こしちゃったの。そしたら、お尻をたくさん叩かれちゃった!すごく痛かったわ!」
「……」
男は長い間黙っていたが、しばらくしてから口を開いた。「羨ましいな」
寺田凛奈:??
寺田芽の何が羨ましいの?叩かれたこと?
この犬男はMなの?
彼女は口角をピクリと動かし、体を反転させて、さらに眠り続けた。
そのとき、彼らに最も近い武術場から、突然熱烈な拍手と驚きの声が聞こえてきた。そして、彼らの横を通り過ぎる人々が熱心に議論していた:
「すごい、あの辻本凌也も強すぎるでしょ?前回怪我をした時、瀬戸門の福山海優先輩よりもひどい怪我だったのに、福山海優先輩はまだ病院で寝たきりなのに、彼はもう体が回復して、しかも前回よりも強くなっているみたいじゃない!」
「そうだね、彼は今さっきたった数手で、Eクラスの武術家を倒したんだ。これは本当にすごい。今や彼の腕前はあの二人とそれほど変わらないんじゃないかな」
「まさか?大師姉と大師兄は日本武術の代表だよ。この辻本凌也は海外の拳王の弟子で、しかも学んでまだ2年しか経っていない。そこまでじゃ……」