藤本建吾は階段を上がって本を読みに行き、寺田凛奈はリビングのソファーに座っていた。
小泉佐友理がまだ到着していない中、内管理人の福山亜由莉がマネージャーらしき人を連れて入ってきた。「凛奈さん、お帰りのタイミングがぴったりです。新シーズンの服が届きましたので、ちょうど選んでいただけます。」
寺田家の最高級な家柄として、毎シーズンオーダーメイドの服が決まっていた。もちろん、寺田家のお嬢様として自分で買いに行くのは別枠だ。
高級オーダーメイドブランドは、毎シーズン訪問し、デザイナーの作品を選んでもらう。マネージャーの後ろには数人のスタッフがついており、それぞれが服地を手に持ち、さらに分厚いカタログを持っていた。そこには様々なスタイルの服が載っており、寺田家のお嬢様方や奥様方に選んでもらうためのものだった。
マネージャーは寺田凛奈を見つけると、すぐに恭しくカタログを差し出した。「寺田さん、まずはご覧ください。」
福山亜由莉が口を開いた。「大小姐と二夫人にお知らせしてきます。」
現在家に住んでいる若い世代は、この二人の女性だけだった。三男の寺田洵太から六男の寺田治まではまだ結婚していなかった。以前は真由美の母親である堀口泉弥も寺田家に住んでいて、服選びに参加していた。
しかし今では寺田真治に追い出されてしまい、家族の人数がまた一人減ってしまった。
寺田雅美が連絡を受けて階下に降りてきたとき、螺旋階段の上に立ち、リビングに座っている寺田凛奈と秋田花泉を見て、足を少し止めた。
彼女は目を細めて福山亜由莉を見た。
以前はこのような服選びの際、三原耀子は決して彼女を階下に降りさせなかった。まずマネージャーを彼女の部屋に直接連れて行き、彼女が選んだ後、残りのスタイルを秋田花泉と堀口泉弥に選ばせていた。
しかし今、福山亜由莉は彼女を階下に降りさせただけでなく、寺田凛奈と秋田花泉を彼女より先に選ばせようとしているのだ!
寺田雅美の心の底にさらなる怒りが湧き上がった。
特に、秋田花泉が今、寺田凛奈と頭を寄せ合わせ、二人が親友のようにカタログを見つめている親密な姿勢は、彼女に対するものとは全く異なっていた。
寺田雅美は目を伏せ、突然冷笑した。
彼女は階段を降り、隣の一人掛けソファーに座った。