第389章 妹は兄に譲らなければ

彼が近づいてくるのを一瞥すると、寺田凛奈はGクラスの前で足を止めようとしていた足取りを一瞬躊躇し、藤本凜人に従って、Gクラスから2台分離れた普通の車の前に向かった。

藤本凜人は後ろを振り返り、寺田洵太を見たときに彼女の行動を理解したが、わざと分からないふりをして、眉を上げて尋ねた。「どうした?俺と一緒に帰りたいのか?光栄だな。」

寺田凛奈:「……」

彼女は目を転がして、口を開いた。「まじめにしてくれない?」

藤本凜人は低く笑った。「小さい頃から今まで、まじめにしろと言われたのは初めてだな。」

人前では、彼はいつも深遠で無表情だったが、彼女の前では、この男はますます自由奔放になっていった。

どういうわけか、寺田凛奈は突然二人の初対面を思い出した。

その時、男は冷たく、深遠だった。

揚城の一流ホテルのエレベーターから出てきたとき、周りの人々に囲まれ、藤本建吾は彼の肩に乗って、後頭部だけが見えていた。

この男は彼女を一瞥し、そして冷たく言った。「寺田さん、君は僕の好みのタイプじゃない。」

……

時が経ち、当時のクールな男が、どうして突然凡人になってしまったのだろう?

彼女が考えていると、男は後部座席に歩み寄り、ドアを開け、寺田芽を中に入れた後、彼女を見て言った。「後部座席に座りたくないの?そうだな、君は絶対に僕の助手席に座りたいんだろう。」

寺田凛奈:「……」

まあ、時が経っても、この男の自惚れは増えこそすれ、減ることはない。

寺田凛奈は自ら後部座席に座り、藤本凜人も気にせず、彼女と寺田芽を乗せて車を出した。

駐車場で。

寺田洵太は大師姉と彼女の夫と娘が車に乗るのを見て、Gクラスの前に立ち、左右を見回しても寺田凛奈の妹が出てこないので、眉をひそめ、Gクラスの窓ガラスを通して中を覗いた。

車の地上高が高く、後部座席を見ると、二枚の服が置いてあるのが見えた。

寺田洵太は驚いた。

これは寺田凛奈が病院で叔父の治療をしているときに着ていた服ではないか?

なぜ後部座席にあるんだ?

おかしい……

寺田洵太は突然何かを悟り、その場で唇を歪めて笑った。

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