寺田雅美はパソコンの画面を見つめ、次第に不気味で陰険な笑みを浮かべた。あのボタンを押しさえすれば、寺田家の人々が落ちぶれていく様子が見られるのだ!
興奮で指が震えていた。
そして、彼女は目を見開いて、そのボタンを押した!
次の瞬間、会社のすべてのデータが消去され、寺田真治が慌てふためく姿が見られるはずだった。しかし……
ボタンを押した途端、目の前のパソコンの画面が突然真っ暗になった!
-
寺田グループ。
寺田凛奈は、彼女がファイルを破壊しようとした時点で、すでに操作を開始していた。指が素早くキーボードを叩き、相手のために罠を仕掛けた。
寺田雅美の技術は確かに向上していた。少なくとも特殊部門は今までネットワーク上の波動から彼女の存在を捕捉できていなかった。
よく見ると、寺田凛奈の耳にはBluetoothイヤホンが付いていた。
イヤホンからは、藤本柊花の声が聞こえていた。「寺田雅美は確かに二日前、堀口泉弥が病気で出所した時に、突然刑務所から消えたわ。そして不思議なことに、あなたが今発見するまで、誰も気付いていなかったの!だから中に相手の仕掛けがあるはずよ!」
石山博義も沈黙した後、口を開いた。「もう少し時間を稼いでください。こちらで彼女の位置を追跡中です。見つけ次第、すぐに逮捕します!」
寺田凛奈は「……石山さん、あなたの部下たち、だめですね!」
石山博義は「……」
咳払いをして「うちのメンバーは最高レベルのホワイトハッカーですが、相手は今回遺伝子変異後、この分野で確かに優れていて、しかも動きが非常に速い。彼女が言うように、QとYに匹敵するレベルになっているので、我々のメンバーがすぐには捕まえられないのも当然です」
他人のために働くのがハッカー、国家機関のために働くハッカーはホワイトハッカーと呼ばれる。
寺田凛奈はこの言葉を聞いて不満そうに「さっき言ったでしょう、彼女はQとYには及ばないって!」
Yは彼女と同様、ハッカー連盟のリーダーで、しかも二人は以前対決したことがあり、お互いの技術がどれほど強いか知っている。寺田雅美に比較されるなんて、格が下がりすぎる!
石山博義は「……」