第500章 臼井先生、入江桂奈を知っている!

「ありがとう、その一億円。うちのことりの慰謝料として受け取っておくわ!」

寺田凛奈の言葉が落ちると、向こう側の入江桂奈は何かに気付いたようで、慌てて叫んだ。「彼はQじゃないの?」

寺田凛奈はその質問に答えなかった。

しかし入江桂奈はすでに理解したようで、すぐに低い声で罵った。「shit!お前...」

言葉が終わる前に、彼の音声通話は切断された!

寺田凛奈は眉をひそめた。

入江桂奈は主人なのに、誰が彼の言葉が終わる前に通話を切断する勇気があるのだろう?

彼女が躊躇している間、寺田治は立ち上がり、恐る恐る寺田凛奈を見つめ、瞬きをしながら言った。「あの、姉さん、その一億円...本当に慰謝料としてもらえるの?」

幼い頃から寺田真治に毎月の生活費を制限されていた寺田治にとって、人生で見た最大の預金額は、藤本悠佑のところで見た数千万円だった。これが初めて見る億単位の資金だった!

彼は先ほど携帯で桁数を数えてみたが、自分の預金額とは何桁もの差があった!

突然億万長者になってしまい、ことりは完全に呆然としていた!

彼の言葉を聞いて、寺田凛奈は不思議そうに「要らないの?」と尋ねた。

「いいえ!そんなことない!すごく欲しいです!」寺田治はすぐにキャッシュカードを自分のポケットに隠し、両手でポケットを押さえた。まるで誰かがカードを奪おうとしたら命がけで戦うような様子だった!

寺田凛奈は口角を引きつらせ、彼のその姿は見るに堪えないと感じた。

藤本柊花は我慢できずに小声で寺田凛奈に話しかけた。「お姉さん、寺田家って、もしかして破産しそうなの?」

ことりをここまで追い詰めるなんて!

たった一億円で、まるで家宝のように扱っている。

寺田凛奈:「...」

突然、寺田治が恥ずかしく感じられた。

しかし、彼女は石山博義の方を見た。

特殊部門と神秘組織の戦いの中で、寺田治が一億円を手に入れた。確かに寺田治が自分の才覚で騙し取ったものだが、もし石山博義が上納を要求すれば、寺田治は本当に差し出さなければならないだろう。

しかし石山博義は何も聞こえなかったかのように、床に倒れている数人のボディーガードの方を向いて「言いなさい、お前たちの主人はどこにいる?」と尋ねた。

「...」よし、この人も気にしていないようだ。