寺田凛奈はわざと遅れて来た。学校での討論会が最初から終わらないようにするためだった。この時期、学生たちは興奮状態で、その熱い思いを発散する場所が必要だったからだ。
討論で発散するのは確かに良いことだった。
また、科学というものは常に議論と覆しの中で発展するものだ。彼女は、この討論会を経験することで、医学生たちが漢方医学と西洋医学についてより深い理解を得られると信じていた。
そして、彼女は時間を稼ぐためでもあった。
壇上に上がった後、彼女は二言三言反論し、証拠があると言いながらなかなか出さなかった。下の人々に好き勝手なことを言わせたのは、石山博義が入江桂奈を逮捕する時間を与えるためだった。入江桂奈はきっとこの討論会に関心を持っているはずで、ホテルでの消去法により、石山博義は既に数人の宿泊者を特定し、今まさに一人一人確認している最中だった。