寺田凛奈が学校を出たところで、携帯が鳴り始めた。
彼女はGクラスに乗り込みながら電話に出ると、向こうから三原さんの声が響いた。「師妹、どこにいるんだ?」
寺田凛奈:「……師兄、ちょっと用事があるので、先に失礼します。」
三原さん:「行かないでくれ!聞いてくれ、私はもう年だ。六十過ぎで、もうすぐ定年だ!漢方医学院の院長職は、君が引き継がなければならないんだ!」
その言葉が出た途端、加納主任の声が聞こえてきた:「Anti、あなたは世界一の外科医なんだから、メスを握るために生まれてきたのよ。三原さんに騙されちゃダメよ!」
「何が騙すだって?これは私の父の命令なんだ!弟子たる者、師の労をとるべきだろう!」
「ふん、弟子って言うけど、凛奈はあなたの弟子じゃないでしょう?あなたのお父さんの弟子よ!」
「……そんなごちゃごちゃ言うな。言っておくが、師妹にメスを握らせるのは才能の無駄遣いだ!」
「メスを握ることが何が才能の無駄遣いですか?彼女は人類の未解明の謎を解明できる!医学の進歩に大きく貢献できるのよ!漢方医学を学ばせるなんて、それこそ才能の無駄遣いです!」
「ふざけるな!加納、厚かましいぞ!」
「三原さんこそ厚かましいでしょう?目上という立場を利用してAntiを脅すなんて!」
「……」
「……」
二人が言い争っている中、寺田凛奈は小さな声で「あの……」
向こうの声が一瞬止まり、そして三原さんと加納さんが同時に口を開いた:
「師妹、誰を選ぶんだ?」
「Anti、私を裏切っちゃダメよ!あなたのために、さっきは嘘までついたんだから!」
「ふん、私の師妹があなたの嘘なんか必要ないでしょう?余計なことを!」
「……この!」
また二人が言い争い始めるのを見て、寺田凛奈は眉を上げ、突然声を上げた:「あれ?師兄、加納さん、何て言ってます?トンネルに入ったので電波が悪くて……あ?電池も切れそう?電源が切れちゃいました?」
そう言うと、すぐに電源を切った。二人からまた電話が来るのを恐れてのことだった。
まったく……頭が痛い。
寺田凛奈はこめかみを押さえながら、運転を続けた。
やっと静かになった。
二十分後、彼女は特殊部門に到着し、中に入ると職員たちが忙しく働いているのが見えた。