寺田凛奈は午後ずっと医術の本を読んでいたが、午後五時になると、藤本凜人から電話がかかってきて、芽が一緒に夕食を食べたいと言っているとのことだった。
寺田凛奈は不思議そうに尋ねた。「じゃあ、来てください。」
藤本凜人は少し躊躇してから、言いたくなさそうな様子で言った。「寺田家には行けないと思います。お父様が私のことをあまり良く思っていないようですから。」
その言葉は本当に切なく聞こえた。
寺田凛奈は急に心が痛くなり、言った。「わかりました。場所を教えてください。建吾と一緒に行きます。」
「はい。」
電話を切ると、藤本凜人はLINEで食事の場所を送ってきた。
寺田凛奈は場所を確認すると、そこまで遠くないことがわかった。
そのため、もう30分ほど医学書を読んでから出発することにした。
しかし、平穏は長く続かなかった。突然、スマートフォンの画面が明るくなり、また倉田隊長からのメールが届いた。特殊部門への勧誘メールだった。
今回は黒猫宛てで、内容は:
【黒猫さん、こんにちは。前回のメールはご覧になりましたか?もし日本の特殊部門に興味がないのであれば、ムヘカルの生死にも興味がないということでしょうか?】
寺田凛奈はその文を見つめ、目を細めて直接返信した:【どういう意味ですか】
彼女は普段から簡潔な返信を好み、句読点すら付けなかった。
相手からの返信も素早かった:【ムヘカルは日本で罪を犯して逮捕されましたよね?彼を救いたくないのですか?もし特殊部門に加入していただければ、彼を釈放する方法を考えられます。】
ムヘカルを釈放する?
寺田凛奈は目を細め、冷笑した。
この人は自分を三歳児だと思っているのか?ムヘカルは法を犯したのだ。正当な理由もなく、特殊部門が彼を釈放するはずがない。
彼女は目を細めて返信した:【どうやって釈放するんですか?】
倉田隊長の返信は更に早かった:【彼が私の情報提供者だと対外的に説明できます。そうすれば、あの集団を本国に引き渡したのも私の指示だったということにできます。】
その言葉を見て、寺田凛奈の瞳孔が急激に縮んだ。
情報提供者……
この理由なら確かに文句のつけようがなく、特殊部門も釈放せざるを得ない!
しかし、なぜ倉田隊長はムヘカルが自分の情報提供者だと言えるのか?