第567章 デート~

藤本凜人を怒らせてはいけない。

寺田真治はこの七文字を心の中で繰り返しながら、理解できない様子で寺田亮を見つめた。

三叔父は寺田家を二番手から今の藤本家と並ぶ一番手の企業にまで育て上げ、これまで国内で多くを見てきた。それでもなお、藤本凜人を怒らせるなと警告を発したということは、藤本凜人の実力はいったいどれほどのものなのだろうか?

彼が深く考え込んでいる時、寺田亮が口を開いた。「もし彼が凛奈に対して本気なら、今私が彼を困らせても気にしないだろう。もし本気でないなら、私が彼の怒りを買おう。どうせ私にはあと数年の命しかない。お前はまだ若いのだから、割に合わないことはするな。」

寺田真治は彼の重々しい言葉を聞いて、急いで頷いた。「父さん、わかりました。」

幸い以前、藤本凜人が木田柚凪のDNAを持って自ら和解を求めてきた時、彼はそれを受け入れた。今では二人の関係は悪くない。

彼はふと気づいた。なぜ自分が藤本凜人の手助けをした時、寺田亮が叱らなかったのか。むしろある程度黙認していたように思える。最初は寺田亮が藤本凜人を気に入っているのかと思ったが、今考えるとそうとも限らないようだ。

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寺田凛奈が外出しようとした時、ちょうど藤本建吾と寺田真由美の二人が手を繋いで帰ってくるところだった。

藤本建吾は大きなランドセルを背負い、小さな顔は無表情で、まさに藤本凜人の縮小版のような、黒くて大きな瞳の持ち主だった。寺田凛奈を見かけると、反射的に寺田真由美の手を離した。

寺田凛奈は真由美を見て、小さな瓜実顔に不快な表情がないことを確認した。幼稚園での出来事が彼女に影響を与えていないことは明らかだった。

それに、寺田真由美は以前はいつも臆病そうで、何をするにも怖がっているような様子だった。

しかし今では眉間の臆病さが少し消えているように見える。建吾が彼女に大きな自信を与えたようだ。寺田真治の言う通り、木田柚凪による二度のネット暴力と名誉棄損は、確かに寺田真由美を成長させたようだ。

寺田凛奈が寺田真由美を観察している時、藤本建吾が不思議そうに尋ねた。「ママ、どこに行くの?」

「えっと。」

寺田凛奈は何となく後ろめたく、目を泳がせながら空を見上げた。「うん、ちょっと人と話があって。」

建吾と芽を連れずに、藤本凜人とデートに行くことに少し後ろめたさを感じていた。