その言葉が出た瞬間、部屋の中は静まり返った。
伯父と伯母は呆然として、二人揃って寺田凛奈を見つめた。「三男、どういう意味だ?」
寺田真治も困惑した様子で凛奈を見つめた。
寺田凛奈は目を伏せたまま、ゆっくりと言った。「以前、後継者の地位を真治に譲った時、あなたたちの名義から養子縁組をしなかったのは私の過ちでした。今考えると、やはり養子縁組をした方がいい。そうすれば少なくとも、あなたたちの口を封じることができる。私の後継者を、誰でも好き勝手に批判できるようなものではない!」
その強い態度に、伯父と伯母は驚愕した。
以前、寺田凛奈が寺田真治を自分の側で育てていた時、二人は凛奈が養子縁組をするのではないかと心配して尋ねたことがあった。しかし凛奈は、子供は養子にしないと言っていた。
みな寺田家の者なのだから、養子縁組は形式的なものに過ぎない。
しかし二人は、今になって凛奈がこのように考えを変えるとは思いもよらなかった。
寺田真治も呆然として、凛奈を見つめていた。
寺田凛奈は彼を見つめながら言った。「真治、私の息子になってくれるか?」
寺田真治の目が一瞬にして赤くなった。
長年、彼は寺田凛奈の下で知識を学び、会社の経営方法を学んできた。言わば、凛奈が手取り足取り育て上げたのだ。
幼い頃、みんなは密かに彼に言っていた。寺田凛奈があなたを育てているのは、ただの気まぐれだよ。そうでなければ、なぜ養子縁組をしないのかって。
彼も凛奈にこの質問をしたことがあった。
寺田凛奈はこう答えた。「私には息子は必要ない。お前を育てるのは、寺田家に後継者が必要だからだ。」
寺田真治はその時理解した。寺田凛奈は自分のことなど考えていなかった。ただ、自分がすべき任務を果たしているだけだった。
寺田凛奈は彼に対して、どこか距離を置いた態度を取っていたのだろう。
たとえ寺田真治が心の中で彼を父親として慕っていても、寺田凛奈がこの世に何の未練も残したくないということを理解していた。
寺田家を継いでから数年が経った今、寺田凛奈がこのような提案をするとは、まったく予想していなかった。
寺田真治は会社の事案に対しても平然と対応できるようになっていたが、この時ばかりは少し感動を覚え、声を震わせながら答えた。「はい、三叔父さん。」