第569話 大変なことになった!!

寺田凛奈は前回、入江冬月が藤本凜人のことを知っていると言ったことで不機嫌になり、一晩中凜人からのメッセージに返信しなかった。

実際には本当に怒っていたわけではなく、その言葉を聞いた時の心の中の不快な感覚に戸惑いを感じていただけで、それで返信をしなかったのだ。

その後、藤本凜人が特殊部門のネットワーク部にハッキングして、直接この件について説明した後、彼女は気が晴れた。

今、入江冬月が彼女の目の前で意図的に藤本凜人に話しかけたが、寺田凛奈は最初から藤本凜人を疑うことはなかった。

彼女は、お互いが好き合っているのなら、互いを信頼すべきだと思った。

さらに、この入江冬月はいつも小細工を仕掛けてくるタイプだった。

そのため寺田凛奈は眉を上げ、藤本凜人の方を振り返った。

普通、男性はどんな状況でも平然としているはずで、特に彼は心が強いのだが、この時藤本凜人は眉を上げ、驚いたような表情を作って、「あなたは?」と聞き返した。

彼のこの言葉の後、入江冬月の目が暗くなった:「私は入江冬月よ、本当に私のことを覚えていないの?」

藤本凜人は目を伏せた:「知りません、お会いしたことがありません。」

入江冬月は焦って一歩前に出て、何か言おうとしたが、藤本凜人が寺田凛奈の肩を抱き、まるで自分の所有権を宣言するかのように、続けて口を開いた:「お嬢さん、私は凛奈の婚約者です。入江さん、ご自重ください。」

寺田凛奈:……

このバカ男!

あの驚いた表情は、半分は入江冬月に見せるためで、もう半分は自分に見せるためだったんでしょ?

それに、このレストランは明らかに藤本グループの系列店なのに、誰かが前に来て彼を止めようとしたとき、寺田凛奈は周りの警護員が飛び出そうとしているのに気づいたのに、直接的に追い払うことができたはずなのに、わざわざ彼女の後ろに隠れるなんて。

もう最高!

寺田凛奈は藤本凜人に白目を向けながら、眉を上げて入江冬月を見つめ、杏色の瞳に鋭い光を宿らせて言った:「入江さん、私の婚約者に何かご用でしょうか?」

入江冬月は困惑した様子で二人を見つめ、藤本凜人を見たり彼女を見たりしながら、最後にこう言った:「彼があなたの婚約者?」