寺田凛奈はその人々から離れ、真っすぐにムヘカルの取調室へ向かった。
この大物は相変わらずのんびりとしており、ソファに寄りかかって居眠りをしていた。ドアの開く音を聞いて、ようやく目を開け、無邪気に彼女を一瞥して声をかけた。「来たのか?今日は昼食を持ってきてないのか?」
寺田凛奈:「……」
本当に彼女を出前係だと思っているのか?
彼女は口角を引き攣らせながら、彼の向かいに座り、尋ねた。「あなたの件は、いつ頃終わりそうですか?」
「もうすぐだ」
ムヘカルは足を組んで、ゆらゆらと揺れていた。
寺田凛奈は遠回しに切り出すしかなかった。「木田柚凪はとても心配しています。本来なら新婚旅行で、彼女と寺田真治は二日後に飛行機とホテルを予約していたんです。あなたが出てこないと、彼女はきっとキャンセルするでしょう」
ムヘカルはその言葉を聞いて、ゆっくりと体を起こし、そして口を開いた。「二日後か?」
寺田凛奈は頷いた。
ムヘカルは一度咳払いをして、「分かった。じゃあ二日後に出所する。彼女に伝えてくれ。絶対に予定をキャンセルするなと。若い二人だ、結婚したばかりなんだから、ロマンチックにすべきときはそうするべきだ」
寺田凛奈:「……はい」
具体的な時期が分かり、寺田凛奈は非常に満足した。彼女は立ち上がってドアを出て、臼井陽一の方へ向かった。男性はまだ咳き込んでおり、寺田凛奈は時間通りに薬を飲むよう注意を促し、さらに二、三質問したが、臼井陽一は何も話さなかったため、そこを離れた。
寺田凛奈が取調室を離れてからそう経たないうちに、ムヘカルは突然ドアをノックした。
彼を見張っていた人がドア越しに尋ねた。「どうしました?」
ムヘカルは口を開いた。「倉田隊長に会いたい!」
その人は彼がついに口を開くと思い、興奮して言った。「分かりました、今すぐ呼んできます!」
すぐにその人は立ち去り、二分もしないうちに、五十歳前後の倉田隊長が大股で歩いてきた。ドアの外に立つと、二人の警備員に向かって言った。「少し離れていてくれ。ムヘカルと話がある」
「はい」
倉田隊長は取調室に入り、まず監視カメラを切り、それからムヘカルを見た。「何をしたい?」
「森岡さんに会いたい」