第615章 子供を送り届けろ!

入江冬月は目を見開き、その目には絶望の色が漏れていた。

彼女は呼吸が困難で、気管が互いにくっついているかのようだった。

脳が酸欠状態になり、目の前が暗くなって、窒息して気を失ってしまった。

「ザブン!」

冷たい水が彼女の顔にかけられ、入江冬月は急に目を覚ました。その時になって初めて、自己が解放され、床に倒れていることに気付いた。

地下室は薄暗く、どれくらい気を失っていたのかわからなかった。

手で顔を拭い、顔を上げると、ソファーに座って足を組んでいる藤本凜人が冷たい目で彼女を見つめているのが見えた。

その眼差しに、入江冬月は震え、先ほどの出来事を思い出し、唾を飲み込んだ。「藤本さん、私を殺さないで!私を殺したら、あの子も死んでしまいます!」

先ほど藤本凜人に首を絞められたせいで気管を痛め、今話す声は嗄れており、さらに話すことで気管が引っ張られ、引き裂かれるような痛みが走った。

入江冬月は自分の首を押さえながら、この瞬間、先ほどの藤本凜人は本当に自分を殺そうとしていたのだと確信した。

彼女がそう考えていると、藤本凜人は突然通信機を取り出した。「これで入江桂奈にお前の状況を常に知らせていたのか?」

それを見て、入江冬月の瞳が縮んだ。

それは位置追跡器と監視装置で、体内に埋め込まれており、入江桂奈が常に彼女の状況を把握できるようになっていた。

そしてあの子の存在があってこそ、入江冬月は自分の安全を確保できていた。

しかし今、これまでも発見されてしまったのか?!

藤本凜人は指の間に挟んでいたチップを床に投げ捨てた。これは寺田凛奈が去る前に注意を促したもので、倉田健祐に機器を探させ、ようやく入江冬月の胃の中からこれを発見したのだった。

彼は足で機器を踏みつぶし、壊してから口を開いた。「お前を殺しても、私の部下があの子を見つけられないと思っているのか?」

入江冬月は大きく驚いた。「私は、私は子供の母親です!」

「それがどうした?」

藤本凜人は淡々と言った。その低く澄んだ声は、この薄暗い地下室で悪魔のようだった。「私はあの子に、お前を殺したのが私だと永遠に知られないようにできる。」

入江冬月は唾を飲み込んだ。

男の細長い瞳に宿る濃い殺意を見て、彼女はこの言葉が嘘ではないことを知った!

彼女の全身が震え始めた。