第609話 パパが居ない~

メッセージを送信した後、寺田凛奈は一言返信した:【大丈夫、後で行くから。】

先ほど、特殊部門の外で、寺田凛奈と藤本凜人は一瞬目が合っただけだったが、その視線の交わりで、藤本凜人は寺田凛奈の意図を即座に理解した。

あれは特殊部門の外だった。

特殊部門は半分警察署のようなもので、公正で厳格な場所だ。そこで入江冬月を尋問するのは不便で、連れ出すのが最善の策だった。

だから、寺田凛奈は流れに乗って芝居を打った。

普通の彼女なら、あの時は嫉妬するはずだ。だから彼女が怒って去ったのは当然のことだった。

その後、入江冬月は世論戦を自作自演し、一見藤本凜人を屈服させたように見えたが、実は藤本凜人も計略に乗って、流れに従っただけだった。

藤本凜人は携帯を置き、再び目を細めた。

入江冬月は感謝すべきだ。もし寺田凛奈が尋問に来る予定でなく、入江冬月があの事件に関係していなければ、彼は今すぐにでも入江冬月を消し去りたかったのだから!