メッセージを送信した後、寺田凛奈は一言返信した:【大丈夫、後で行くから。】
先ほど、特殊部門の外で、寺田凛奈と藤本凜人は一瞬目が合っただけだったが、その視線の交わりで、藤本凜人は寺田凛奈の意図を即座に理解した。
あれは特殊部門の外だった。
特殊部門は半分警察署のようなもので、公正で厳格な場所だ。そこで入江冬月を尋問するのは不便で、連れ出すのが最善の策だった。
だから、寺田凛奈は流れに乗って芝居を打った。
普通の彼女なら、あの時は嫉妬するはずだ。だから彼女が怒って去ったのは当然のことだった。
その後、入江冬月は世論戦を自作自演し、一見藤本凜人を屈服させたように見えたが、実は藤本凜人も計略に乗って、流れに従っただけだった。
藤本凜人は携帯を置き、再び目を細めた。
入江冬月は感謝すべきだ。もし寺田凛奈が尋問に来る予定でなく、入江冬月があの事件に関係していなければ、彼は今すぐにでも入江冬月を消し去りたかったのだから!
残念ながら、入江冬月はこれらを知らないようだった。
車は藤本家まで走り、藤本凜人の住居に到着した。
車が止まると、藤本凜人は入江冬月を連れて下車し、直接居間へ向かった。居間に入ってすぐ、藤本凜人が入江冬月を取り押さえようとした時、突然藤本奥様の声が聞こえてきた:「凜人、やっと帰ってきたのね!」
そう言うと、彼女は杖をつきながらよろよろと近づいてきた。「ネットの記事は一体どういうこと?あの女の子とはどういう関係なの?」
そう言い終わると、藤本凜人の後ろにいる入江冬月に気付いた。
藤本奥様は一瞬驚き、眉をひそめた:「この方は?」
入江冬月はすぐに一歩前に出て、藤本奥様の手を握った:「奥様、私は入江冬月です。記事に出ていた女性です。私と藤本さんは……」
ここまで言って、彼女は恥ずかしそうに藤本凜人を一瞥してから、また俯いた:「そういう関係です。」
藤本奥様は眉をひそめ、困惑した様子で藤本凜人を見た:「凜人、これは……」
入江冬月が何か言おうとした時、藤本凜人は表情を冷たくし、直接言った:「祖母、私には話があるので、先に退いていただけますか。」
藤本奥様は実は藤本凜人を恐れていた。