藤本凜人は胸がドキドキと高鳴り始めた。寺田凛奈からのこのような返事は予想外だったが、それでも口を開いた。「分かった。彼を君に会わせに行く」
「いいえ、私が行くわ」
寺田凛奈はそう言うと、すぐに電話を切った。藤本凜人は苦笑いを浮かべながらも、なぜか心が不安になり始めていた。
いつも冷静沈着な彼が、もしこの子が自分と凛奈の子供ではなく、本当に他の女性との子供だったらどうしようと、そんな不安を感じ始めていた。
さっき凛奈がもう少し話してくれていれば、心の準備ができたのに。
考え込んでいると、振り返った先で入江和夜が好奇心に満ちた目で彼を見つめているのに気がついた。
子供の目は純真そのもので、まるで白紙のように何も映っていない。しかし彼が目を合わせると、和夜はわざとらしく余裕のある表情を作り、まるで先ほど彼を観察していた人物が自分ではないかのようなふりをした。
小さな子供なりのプライドがあるのだろうが、時折見せる純真な表情に、彼は唇を引き締めた。
藤本凜人は認めざるを得なかった。先ほどの和夜が彼を盗み見る姿は、彼の心に響き、この子に対する憎しみや嫌悪感が消えていった。
静かにため息をつき、和夜の前に歩み寄って頭を撫でようとした時、和夜が口を開いた。「電話してた人は鬼嫁?」
藤本凜人:?
入江和夜は目を転がした。「ビビってる様子が丸見えだよ!」
「……」
藤本凜人の和夜の頭を撫でていた手が、突然むずむずし始め、彼のお尻と親密な接触を持ちたくなった。
彼は口を開いた。「子供を叩いたことはないんだが」
入江和夜は一瞬固まり、何か言おうとした時、低い声で続きを聞いた。「初めての経験にならないことを祈るよ」
「……」
入江和夜は認めざるを得なかった。脅されたと感じた!
藤本凜人はテーブルの上のお粥を指差した。「食べなさい」
入江和夜はテーブルの上の料理を見下ろし、スプーンとフォークを手に取って食べ始めた。
ようやく落ち着いた様子を見て、藤本凜人はほっと息をついた。和夜が食事を終えるのを待って、彼は口を開いた。「後で...綺麗なお姉さんが君に会いに来る。おとなしくしていられるよね?」
入江和夜が寺田凛奈の息子かどうかに関わらず、藤本凜人は凛奈が和夜に対して悪い印象を持つことは望んでいなかった。