第622章 小悪魔!

「奥様、奥様、大変なことが起きました!旦那様にそっくりな人物が、旦那様の息子だと名乗って、旦那様のところに連れて行かれました!」

藤本奥様がアフタヌーンティーを楽しんでいる時、彼女の専属の管理人が慌てて駆けつけ、玄関で起きた出来事を報告した。

奥様は驚愕し、急に立ち上がった。「何ですって?」

彼女は唾を飲み込んで、「あの子は誰の子供なの?凜人はどうしたの、どうして突然父親になるのが好きなの!」

管理人:「……」

そうですね、5年前に一度父親になって、今また父親になったとは!

奥様は管理人の手を掴んで、「行きましょう、見に行きましょう!」

道中、彼女は我慢できずに管理人に言った:「この件は、絶対に秘密にしなければなりません!寺田家に知られてはいけません!」

管理人は驚いて:「奥様は寺田家との縁談に反対されていたのではないですか?」

「何を言っているの?京都で凜人に相応しいのは寺田家のお嬢様だけよ。寺田雅美はもういないから、今は寺田凛奈しかいないわ。それに、彼女は建吾のお母さんでもあるのよ!私が心配しているのは、この子供の件が寺田家に伝わって、婚約を破棄されることよ!」

藤本奥様は眉をひそめ、実家の件を思い出して...さらに声を落として:「それに、今は私たちが彼女に頼み事があるのよ!」

管理人はすぐに何かを悟り、頷いた。

二人が藤本凜人の別荘に着いた時、ちょうど中から低い叫び声が聞こえてきた!

彼女は急いで中に入ると、黒いリュックを背負った少年が、警備員の手を握りしめて、強く噛みついて離さない様子が目に入った。

その警備員は手を取り返そうとしたが、若旦那の歯を傷つけることを恐れ、かといって力を入れないと手が抜けない。

この小僧は、全力で彼の手を噛んでいるのだ!

傍らにいる外管理人は、藤本凜人の腹心で、藤本凜人に忠実な人物だが、この状況を見て焦って叫んだ:「若旦那、お願いですから離してください!このまま噛み続けると、小黒の指が折れてしまいます!」

入江和夜は藤本凜人にそっくりな切れ長の目で睨みつけながら、口を離さず何かもごもごと言っていた。

管理人には聞き取れなかったが、口を開いた:「口腔粘膜を採取するだけです。あなたを害するつもりはありません!」

入江和夜はまだもごもごと言い続けた。