二人がスマートフォンを見つめていた。
入江和夜が内管理人に導かれ、エレベーターから出てくるのが見えた。
彼は歩きながらピョンピョン跳ねていて、落ち着きがなく、きょろきょろと目を動かして周りを見回していた。
この地下室は尋問用に作られたもので、薄暗く湿気が多かった。普通の子供なら入ってきただけで暗がりを怖がるはずだが、入江和夜は何でもないかのようだった。
なかなか度胸があるな。
藤本凜人は心の中で感心した。
もし自分の息子なら、恥ずかしくないな。
そう考えていると、入江和夜が尋問室に入っていった。
藤本凜人は監視カメラを切り替え、尋問室の中を映し出した。室内の配置は以前と変わらず、唯一の違いは入江冬月が隅に倒れていることだった。
五日間何も食べていないせいか、彼女は非常に衰弱していたが、さすがに汚れてはいなかった。地下室に水があったからだ。
寺田凛奈は眉を上げた。「彼女、自分のケアはしっかりしているのね」
藤本凜人が口を開いた。「毎朝顔を洗って歯を磨いているようだ。さすがに精神力が強いな」
訓練を受けているだけのことはある。
二人がそう考えていると、映像の中で入江冬月が音を聞いて顔を上げ、入江和夜を見つけると目に喜色が浮かんだ。「和夜!お母さんに食べ物を持ってきてくれたの?早く渡して!」
入江和夜は袋を投げ渡した。
入江冬月は急いで袋を取り、中を探り始めた。しばらく探した後、袋の中には腐った葉っぱと一本のニンジンしかないことに気づき、激怒した。「入江和夜!」
彼女は唇を噛んだ。「私が落ちぶれたのを見て、わざと仕返ししているのね?」
仕返し?
この言葉に、藤本凜人と寺田凛奈は顔を見合わせた。
入江和夜は手を広げた。「仕方ないよ。ここは藤本家だし、藤本凜人が食べ物を持ってくるのを禁止したんだ。これだけ盗めただけでも上出来だよ」
入江冬月はこの言葉を聞いて、怒りを爆発させた。「あの人は人でなしね!どうして女性にこんな冷たくできるの!食べ物一つくれないなんて!まるでカツロウダイみたい!」
スマートフォンを見ながら、突然悪者にされた藤本凜人:??
寺田凛奈は低く笑いを漏らした。
この子、面白いわね!
入江冬月は本当に藤本凜人の命令だと思い込み、もう気にせずニンジンを食べ始めた。