寺田凛奈は先ほど入室した時から、ずっと隅に隠れていて、他人の家庭の事情に干渉しようとはしなかった。
そのため、騒がしく口論していた人々は彼女の存在に気付いていなかった。
この時、彼女が口を開くと、三原伶はようやくぼんやりと顔を上げ、彼女を見つけると、すぐに涙を拭って立ち上がった。「寺田さん...どうしてここに?」
寺田凛奈が答える前に、三原璃が直接尋ねた。「寺田さん、先ほどのお言葉はどういう意味ですか?」
寺田凛奈はため息をついた。
三原伶の性格は本当に柔らかすぎる。温厚で優雅なのは良いことで、優しさも性格の一つだが、過度な弱さは、ただ人に付け込まれるだけだ。
三原璃は性格が異なり、もっと爽やかで、質問も要点を突いている。
寺田凛奈は慰めの言葉を掛けようとはせず、ただ口を開いた。「あの春姫さんの子供は、谷本蒼樹さんの子ではありません。」