寺田凛奈は目を細め、老いぼれを注意深く見つめた。
病室は静寂に包まれていた。
リリは二人が話し始めた時から、部屋を出て、ドアの外で待機していた。
白い病室の中は、物音一つせず、空気中には静けさと刺激的な消毒液の匂いだけが漂っていた。
しかし、この匂いは老いぼれにも寺田凛奈にも非常に馴染みのあるものだった。
前者はここに長く住んでいたため、この匂いに慣れており、後者は幼い頃から、ほとんどこの匂いの中で育ってきた。
子供の頃は体が弱く、よく入院していた。家でも、彼女の部屋は消毒液で消毒されていた。
寺田凛奈はアーモンド形の瞳を少し伏せると、老いぼれがゆっくりと口を開くのを聞いた。「あの年、お前が生まれた後、お前の母親は神秘組織が追ってきていることに気付いた。お前を生かすために、神秘組織の前で死んだふりをして、彼らの追及を止めさせた。しかし、私たちは分かっていた。神秘組織は必ず調査を続けるだろうし、それに、臼井家の人間が信用できるかどうかも、誰にも分からなかった。」