第678章 私はあなたのママよ(1)

入江和夜は緊張して首を伸ばし、後部の窓ガラスを通して後ろを見た。

彼は小さな体を座席に乗せ、小さな頭には大きな目が不安と恐れでいっぱいだった。この二人のボディーガードは、幼い心に深い恐怖を植え付けていた。

入江桂奈もそのことを知っていたからこそ、この二人を寄越したのだろう。

なぜなら、他の誰かだったら、入江和夜はこんなに大人しくしていなかっただろうから。

彼は有名な反抗児で、家では常に他人をいじめていた。この二人のボディーガード以外は……

入江和夜はそこまで考えて、思わずため息をついた。「藤本建吾、今度はお前の母さんの番だな。」

藤本建吾:?

彼は目を回して言った。「お前の母さんこそ終わりだよ!僕のママは強いんだから!」

その言葉を聞いて、入江和夜は口を尖らせた。「僕の母さんはもう終わってる。父さんが言ってたよ、僕を産んですぐ死んだって。」

藤本建吾はその言葉を聞いて、少し驚いた。

入江和夜がそんな言葉を口にするとは思わなかった。

彼は一瞬呆然として、それから突然手を伸ばし、入江和夜の肩を叩いて慰めた。「ごめん。」

先ほどの言葉を謝った。

入江和夜は適当に手を振った。「お前は僕の母さんが死んでたなんて知らなかったんだから、お前のせいじゃない。でもお前の母さんももうすぐいなくなるよ。」

藤本建吾:「……」

入江和夜は唇を噛みながら、藤本建吾に外の状況を報告した。藤本建吾は足を縛られていたので起き上がれず、入江和夜が緊張した声で話すのを聞いていた。「お前の母さんが車から降りた……二人のボディーガードの方に歩いていってる……僕の方を見た。窓にはフィルムが貼ってあるけど、僕が見えたはずだよね?だったら、お前がここにいるのも分かってるはず。建吾、お前の母さんがボディーガードと話し始めた。お願いしてるのかな?」

藤本建吾は座席に倒れたまま、必死に起き上がろうとしながら言った。「……ママが寝てると思う方が、お願いしてるなんて信じられるよりましだよ。」

ママの性格からして、あいつらを地面に這いつくばらせないと気が済まないはずだ。

ママは瀬戸家の大姉なんだから!

彼が武術を習えたのも、瀬戸さんがママのことを考えてくれたからだ。