その言葉を聞いて、皆が呆然とした。
Y国のルーシー姫?
それは誰?
皆が一斉に藤本凜人を見つめた。一瞬、藤本家はそこまで力を持つようになったのかと思った。Y国の王室が直々に子供の誕生日を祝いに来るほどの地位になったのか?
王室は簡単には財閥と親密な関係を持たないことは周知の事実だった。
皆が感心している時、誰かが口を開いた。「藤本さん、いつからY国の王室とお付き合いがあったんですか?」
藤本凜人は眉をひそめた。他の人々のように王室の姫の来訪に緊張した様子はなく、むしろ冷静に執事に指示を出した。「お客様だ。中へご案内しなさい」
「かしこまりました!」
執事は頭を下げて部屋を出て行った。
執事が去った後、谷本奥様は寺田芽に向かって尋ねた。「あなたのおばあちゃんはどこの国にいるの?」
寺田芽は首を傾げて「Y国ですよ!」
谷本奥様は口を押さえて笑った。「まあ、もし藤本さんがY国の王室と知り合いだと早く分かっていれば、このお姫様にプレゼントを渡してもらえば、もっと面目が立ったのに!」
つまり、寺田家のパフォーマンスが過ぎたということだ。
この宝石を贈るなら、身分のある人に渡してもらうべきで、そうすれば寺田凛奈が外で本当に影響力があることを証明できたのに、という含みだった。
しかしその言葉が落ちた途端、藤本凜人が口を開いた。「私は知りません」
実際は知っていた。
だが、彼が知っているのはルーシー姫の母親、つまりY国の女王陛下だった!
しかし、彼は女王陛下に招待状を送っていなかったはずだ。少し控えめにしたかったからだ。それに5歳の誕生日は、そこまで大きな節目でもない。
もしかして、あの少し抜けている女王が、彼の子供の誕生日を聞きつけて、わざわざお姫様を寄越して機嫌を取ろうとしているのだろうか?
それはありえない……
彼の身分がそこまで露見するはずがない。
藤本凜人が眉を寄せて考えている間に、執事はすでに貴賓を案内して入ってきた。
入ってきたのは金髪碧眼の少女で、肌は白く、大きな二重の目は輝いていた。肩まで届く金色の巻き毛が背中に広がり、ウエストが締まったドレスを着て、凛とした佇まいだった。
まだ5歳で体つきは未発達だったが、このお姫様は人形のように格別に可愛らしかった!