実は来る途中、寺田凛奈は写真を見ながら、佐竹璃与から転送された森岡さんの症状を見て、黙々と処方箋を計算していた。
薬物の含有量は全て低く、花にはほとんど影響がないはずだ。
自分の専門知識について、寺田凛奈はいつも自信を持っていた。なにしろ、以前揚城にいた時は、誰も診察に来なかったため、いじゅつを向上させるために、家で育てている花や草木の治療をしていたのだ!
だからこそ、蘭の症状についてこれほど詳しく理解できているのだ。
もちろん、この方法は本当に難しい。
花と人間は明らかに違うから、寺田凛奈が常に花や草を実験に使っていなければ、薬剤の用量をこれほど上手く把握することはできなかっただろう。
彼女が差し出した紙を見て、佐竹璃与は少し戸惑った。
受け取ると、すぐに処方箋の写真を森岡さんに送信した。
送信後、顔を上げて言った:「凛奈、この処方箋を書くの早すぎじゃない?」
森岡さんと再び話すこともなく、すぐに処方箋を決めてしまった。
寺田凛奈はゆっくりと口を開いた:「この病気は他の花で経験済みだから、少しは分かるの。」
佐竹璃与:「……」
口角を引きつらせていると、森岡さんから電話がかかってきた:「三井夫人、いただいたこの処方箋は……?」
佐竹璃与は寺田凛奈を一瞥して:「私の義理の娘が書いたものよ。これで試してみて!少なくとも間違いはないわ。」
森岡さんはため息をついた:「信用していないわけではないのですが、この処方箋をいただくのが遅すぎました!」
佐竹璃与は驚いた:「どういうこと?」
森岡さんは話し始めた:「さっき北島梨恵佳が私のところから、あの鬼蘭を借りていきました。私の鬼蘭を治療する傍ら、蘭の博物館を開きたいと言って、京都の蘭が好きな人たちに鑑賞してもらいたいそうです。」
森岡さんが言わなかったのは、北島梨恵佳が彼だけでなく、京都の様々な名家の人々にも声をかけていたことだ。結局のところ、蘭のような高級品種は一般家庭では育てられないものだから。
北島梨恵佳は多くの人々を集め、名花展覧会に参加して見識を広めようと、物事を隠さずにみんなで共有しようと美しく言い表した……
言外の意味は、佐竹璃与が器量が小さいということだった。
森岡さんは離間を煽りたくなかったので、この話はしなかった。