第716章 寺田凛奈は松野だった!

佐竹璃与は緊張していた。落ち着いた様子を装おうと努めていたが、今この瞬間、固く握りしめた指と縮んだ瞳孔が彼女の感情を露呈していた。

藤本凜人は見知らぬ番号に視線を落とし、一言注意を促した。「お電話です。」

「え?ああ、たぶん営業電話でしょう。」

佐竹璃与はそう言いながら、再び電話を切った。そして、まるで電話が再びかかってくることを恐れているかのように、すぐに電源を切った。彼女は笑顔を装いながら言った。「もう、うるさいわ。こういう営業電話が多すぎるわ。せっかく一緒に食事してるのに。」

藤本凜人は彼女のその様子を見て、頷いた。

寺田凛奈と藤本凜人は目を合わせ、二人とも彼女の偽装を暴露しなかった。

その後、佐竹璃与は興奮して楽しそうな様子を装おうと懸命に努めたが、二人は彼女の心ここにあらずな様子を見抜いていた。

結局のところ、寺田凛奈と藤本凜人の観察力は並外れていた。

食事が終わり、二人は佐竹璃与と別れた。

別れる前に、寺田凛奈は再び佐竹璃与を見て、探るように尋ねた。「明日、蘭の展示会で会いましょう?」

佐竹璃与は躊躇したようだった。きっとあの電話の影響だ。

しかし、彼女はほんの一秒だけ黙った後、顔を上げた。「うん。」

その口調は断固としていた。

彼女の態度がもう変わらないことを示していた。

彼女は本当に賭けに出ていた。もし寺田凛奈があの鬼蘭を治せたら、彼女は真実を話すつもりだった。もし治せなかったら、その真実を棺桶まで持って行き、永遠に子供たちに迷惑をかけないつもりだった。

彼女のその様子を見て、寺田凛奈と藤本凜人は目を合わせ、二人は再び立ち去った。

寺田凛奈と藤本凜人は同じ車に乗り、藤本凜人が運転して前方の角を曲がったところで停車した。

この時、寺田凛奈は既に自分の携帯を非通知設定にし、先ほど佐竹璃与の携帯に表示されていた番号を入力していた。

彼女は一目で覚える能力があり、記憶力が驚異的で、ちらりと見ただけでその番号を覚えていた。

そして、寺田凛奈は自分の携帯を藤本凜人に渡した。

藤本凜人は躊躇なく電話をかけた。

相手はすぐに出て、男の声が聞こえてきた。「もしもし?」

藤本凜人は即座に尋ねた。「誰だ?」

相手は一瞬黙り、そして低く笑い、何も言わずに電話を切った。

藤本凜人:!!