第716章 寺田凛奈は松野だった!

佐竹璃与は緊張していた。落ち着いた様子を装おうと努めていたが、今この瞬間、固く握りしめた指と縮んだ瞳孔が彼女の感情を露呈していた。

藤本凜人は見知らぬ番号に視線を落とし、一言注意を促した。「お電話です。」

「え?ああ、たぶん営業電話でしょう。」

佐竹璃与はそう言いながら、再び電話を切った。そして、まるで電話が再びかかってくることを恐れているかのように、すぐに電源を切った。彼女は笑顔を装いながら言った。「もう、うるさいわ。こういう営業電話が多すぎるわ。せっかく一緒に食事してるのに。」

藤本凜人は彼女のその様子を見て、頷いた。

寺田凛奈と藤本凜人は目を合わせ、二人とも彼女の偽装を暴露しなかった。

その後、佐竹璃与は興奮して楽しそうな様子を装おうと懸命に努めたが、二人は彼女の心ここにあらずな様子を見抜いていた。