第715章 地獄からの電話

彼の声を聞いて、藤本凜人は目を細めた。彼は「必要ない」と言いたかった。佐竹璃与の口から直接聞きたかったからだ。

しかし、言葉を飲み込んだ。

佐竹璃与が彼に話す理由は、きっと自分の辛さを語ることはないだろう。彼女の苦しみは、他人の口からしか知ることができない。

例えば、佐竹璃与は決して彼に蘭の花を好きな理由を話すことはないだろう。なぜなら、彼女は自分の感情を表現することのない女性だからだ。

藤本凜人は考えながら、口を開いた。「いいよ、話して」

京都郊外の別荘で。

藤本修也と北島梨恵佳はソファに座っていた。

北島梨恵佳は彼を見つめ、藤本修也は口を開いた。「君は多分、私が当時北島おばさんと不倫をしたことだけを知っているから、私たちの結婚の破綻は全て私の責任だと思っているんだろう?」

藤本修也のこの言葉は、多くの女性の心理を言い当てていた。不倫する男は全てクズだと。

藤本凜人は目を伏せ、冷笑した。「違う」

藤本修也は一瞬固まった。

藤本凜人は言った。「あなたは良い夫ではなかった。そして同時に、良い父親でもなかった」

多くの人は、男が不倫をすれば、もはや良い父親ではいられないと考える。

しかし、実際はそうではない。

不倫をする男性もいるが、子供への愛情は変わらないこともある。不倫という行為自体は子供に影響を与えるかもしれないが、その後できる限り埋め合わせようとする。

まして、夫婦の中には確かに一緒にいるべきではない場合もある。たとえ子供がいても、離婚すべき時は離婚すべきだ。しかし離婚は、それぞれが子供を愛することには影響しない。

しかし藤本修也はそうではなかった。

彼は不倫をして佐竹璃与を傷つけただけでなく、その後藤本凜人を放置し、まるでこの息子など存在しないかのように振る舞った。

彼が裏切ったのは、佐竹璃与だけでなく、藤本凜人でもあった。

藤本修也はしばらく固まった後、やっと言い訳を始めた。「凜人、私はお前を放置したわけじゃない、愛していないわけでもない……」

「そんな年になって、まだ愛だの何だのと口にするのはやめませんか」

藤本凜人は再び冷たく言い返した。

藤本修也は「……」

藤本凜人は簡潔に言った。「理由を直接言ってください」