第721話 私は物語を聞きに来た

「……」

その場は突然静まり返った。

隣にいた人がまだ理解できていなかったので、親切に説明した。「寺田さん、藤本夫人が言ったのは、松野の真髄を真似できる人はいないということで、あなたのことではありません……」

言葉がそこで途切れ、やっと何かに気づいたように驚いて叫んだ。「あなた、あなたが松野なの?」

寺田凛奈は彼女を一瞥したが、何も言わなかった。

佐竹璃与は顎を上げ、誇らしげに周りの人々を見渡した。「そうよ、私の義理の娘が松野なの」

「どっ」と一気に、展示会場全体が沸き立った。人々は驚きの目で寺田凛奈を見つめた。「彼女は三原御医の直弟子で、外科医のAntiでもある。今、彼女が松野だと聞いても、全く驚かないわ……寺田さんのいじゅつは、本当に素晴らしいわ!」

「まあ、松野がずっと私たちの身近にいたなんて、海外にいるんじゃなかったの?」