第722話 真実(3in1)

佐竹璃与は寺田凛奈を見つめ、再び藤本凜人の方を向いた。

寺田凛奈は蘭の展示会に行くとだけ言い、それ以外のことは藤本凜人に何も明かさなかった。展示会に向かう途中でも、あの鬼蘭を救えるとだけ言って、自分が松野だということは話さなかった。

だから佐竹璃与は寺田凛奈がその鬼蘭を治せるかどうか、ずっと疑問に思っていた。

でも藤本凜人は彼女をそこまで信頼していた。

これが互いを信頼し合う感覚なのだろうか?

よく考えてみると、自分の人生で誰一人信頼できる人がいないというのは、かなり悲しいことだった。

本当に数えてみれば、おそらくあの人だけを信じていた……

そう思うと、佐竹璃与は目を伏せ、隣の温室を指さして言った。「中で話しましょう」

蘭が好きになりたいと思ったから、本当に蘭が好きになった。そして花を育てるとき、これらの花の世話をするとき、全ての雑念を捨てて、心を込めて作業に没頭できた。

だから、佐竹璃与はこの数年間、本当に蘭が大好きだった。

温室に入ると、彼女の心は落ち着いた。

静かに座り、傍らに福山さんが用意しておいた急須でお茶を三杯注ぎ、テーブルの両側に置いた。

ガラスの温室に、陽光が遠慮なく差し込んでいた。

この寒い天気の中、暖かな雰囲気が漂っていた。

白いテーブルと椅子が、この場所に田園風の優雅さを添え、ここに座っているだけで本当に世間との争いを忘れられそうな気分にさせた。

佐竹璃与の目は隣の蘭に注がれていたが、ずっと黙ったまま、どう切り出すべきか迷っているようだった。

そのとき、藤本凜人が口を開いた。「あの時の誘拐事件と関係があるのか?」

佐竹璃与は少し驚いて、彼を見つめた。

藤本凜人は淡々と言った。「あの年、僕は五歳で、家に突然見知らぬ女性が現れ、母さんと呼べと言われた。僕は拒否して、その後誘拐された」

藤本凜人は目を伏せた。「その後、ある人に出会った。その人は誘拐犯たちともみ合いになり、僕はその隙に逃げ出した。記憶を頼りに家まで帰り着いた。ずっと自分が賢かったから、チャンスを掴めたと思っていた。でも今考えると、どうしてあの人がちょうど誘拐犯と揉め事を起こしたのか?あの人は、あなたが手配した人なのではないですか?」

佐竹璃与は唇を引き締め、最後にうなずいた。「そう言えるわね」