北島梨恵佳の言葉が終わると、藤本奥様は即座に怒鳴りつけた。「何の説明が必要なの?寺田凛奈は寺田家で育ったわけでもないのに、寺田家に何の責任があるというの?余計なことを言わないで!婚約を解消したとしても、寺田家との協力関係は変わらないわ!子供たちは二人の子供で、寺田家の孫なのよ!」
藤本家は寺田家に取り入る必要はなかったが、寺田家が藤本凜人を支持してくれれば、孫の将来はより順調になるはずだった。
藤本凜人が息子に勝った瞬間から、藤本奥様の心は藤本凜人に傾いていた。
彼女は、藤本修也のために証言に立った瞬間から、孫が心を離してしまうことを知っていた。しかし、彼女のしたことは全て藤本家のためだった。
藤本凜人は藤本奥様が手塩にかけて育てた子供で、息子と孫への愛情は同じだった。
今は、より有能な方を支持するだけだった。
例えば、次男も彼女の実子だったが、当時も彼女は躊躇なく藤本凜人の味方をしていた。
藤本奥様の言葉が終わると、北島梨恵佳は口を尖らせた。
しかし、彼女は奥様に逆らう勇気はなかった。この家では、奥様の認めを得てこそ、より遠くまで行けるのだから。
彼女は再び口を開いた。「そうですよね、寺田凛奈は寺田家とは違いますから...でも、二人の婚約が解消されたら、寺田家が子供たちの親権を争ってくるのではないかと心配です。」
この言葉に、藤本奥様は眉をひそめ、思わず「建吾は渡せないわ!」と言った。
そして少し躊躇した後、「芽はお父さんが好きだから、ここに残るべきよ。私たちは子供たちの意思を尊重すべきだわ!」
北島梨恵佳はため息をついた。「寺田亮様は、妥協しやすい方ではありませんよ。」
藤本奥様は冷笑した。「寺田家は今や寺田真治のものよ。寺田真治が建吾を引き取って、自分の子供たちと財産を争わせたいと思うかしら?」
しかし北島梨恵佳はさらに油を注ぐように「でも寺田亮様がまだいらっしゃいますし...」
藤本奥様は彼女を鋭い目で見つめた。「寺田亮がいるからこそ、私たちはよく話し合うべきなの!何でも話し合えるはず!でも、この件は私たちの過ちではないわ!」