藤本奥様はため息をつき、谷本さんの表情の変化に気づかず、続けて話し始めた。「人を疑うなら使うな、使うなら疑うな。それに、ビジネスには損得がつきものよ。だから、時々プロジェクトで失敗することは、凛奈にとっても当然のことだわ。彼女は初めて会社を任されたのだから、彼女を見下げるようなことは言わないで...以前の友人は確かに信用できない人たちだったかもしれないけど、藤本夫人として、これからの友人は必ず信頼できる人たちになるはずよ...」
しかし谷本さんは携帯電話を見つめ、そこに表示された価格を見て、完全に呆然としていた。
彼は目を見開いて、信じられない様子で携帯電話を見つめ、自分が見間違えているに違いないと思った。
下がらないのはまだいい、ずっと下がり続けるわけにはいかないのだから。でも、まさか上がるとは?
しかも、価格は変動していて、しばらくするとまた上がっている?
谷本さんは唾を飲み込んで、顔を上げた。
藤本奥様は話し続けていた。「だから、寺田凛奈に会ったら、もうこの件は触れないで、過ぎたことは過ぎたこととして...さあ、行きましょう!」
藤本奥様は谷本さんと話しながら、すでに社長専用エレベーターの中に座っていた。
ピン
エレベーターは最上階に到着した。
藤本奥様の言葉が終わるや否や、ドアが開き、CCが外に立っていて、奥様を見ると敬意を込めた表情を浮かべた。「奥様...」
藤本奥様は頷き、尋ねた。「寺田凛奈は?」
CCは答えた。「取締役会議中です。」
「取締役会議?あの人たちは本当に彼女を困らせるつもり?」
藤本奥様はそれを聞くと焦り、すぐに向きを変えて会議室に向かおうとした。「見に行きましょう。寺田凛奈はあんなに不器用で、こういう場面に慣れていないから、きっと誰かに脅されて、我が家の面目を失うことになるわ!!」
言葉は厳しかったが、足取りは速く、まるで一歩でも遅れれば寺田凛奈が何か不当な扱いを受けるのではないかと心配しているかのようだった。
CCは彼女の後ろについて急いだ。「奥様、何をおっしゃっているんですか?今は会社中が喜んでいて、寺田社長を持ち上げるのに必死なくらいです。寺田社長はどんな場面も経験していますし、こんな小さな場面なら問題ありません!」