ザデンが部屋に入ってきて、左右を見回した。
「何をしているんだ?」彼はイライラした様子で問いただした。
ジャスミンは素早く紙を袖に隠し、二人は彼の方を向いた。
彼女は引きつった笑顔を見せた。
「来たのね」と彼女は言った。
「当然だ」と彼は言った。「群れの全員を出して君を探させたんだぞ。最後の別れは認めるが、出発が遅れている」
彼女は弱々しく微笑んだ。「アーマが亡くなったの。魂たちが葬式のために彼女の遺体を持って行ったわ」
彼は言葉を失い、適切な言葉を探しているようだった。
最後に彼はこう言った。「お悔やみ申し上げる。彼女は本当に君のことを大切に思っていたようだな」
「ええ」とジャスミンは答えた。
そして、アーマが本当に亡くなり、もういないのだと思い出し、寒気を感じた。
ネッドが振り向いて彼女を見た。
「大丈夫か?」と彼は尋ねた。
彼女は無感情に頷き、皆が彼女に向ける同情の眼差しを嫌悪し始めた。
彼女は腕をさすりながら前に歩き出した。
ザデンは後を追おうとするネッドを止めた。
「何があった?」と彼は尋ねた。
ネッドは軽く肩をすくめた。「ただ倒れただけです」
「それだけか?」とザデンは尋ねた。「何か普通じゃないことは?」
「いいえ」ネッドは首を振った。「彼女は高齢でしたから、時が来たんでしょう」
ザデンは何も言わず、まだ完全には立ち去っておらず、二人の会話を盗み聞きしていたジャスミンはほっと胸をなで下ろしてから、ようやく前に進んだ。
彼女は群れの一階に到着し、長年自分の家だと思っていた場所を振り返った。
窓際や、ドア、路地に群れのメンバーたちが立ち、彼女を見下ろしていた。
まるで彼女が去るのを見送っているかのように。
ここに来るのは、おそらくこれが最後になるだろうと彼女は知っていた。
別れを告げる相手は誰もいなかった。
父と継母は死んでいた。
彼女が今まで大切にしてきた唯一の人も死んで、いなくなってしまった。
ここには何も残っていなかった。
もはやここは彼女の家ではなかった。
彼女はもう一度この場所を見渡してから、一行のいる場所へと向かった。
アンナは彼女が馬車に近づいてくるのを見て鼻を鳴らした。
「私と同じ馬車に乗るつもりじゃないでしょうね」とアンナは彼女に向かって噛みつくように言った。