唐清だと確認できてから、蘇千瓷はようやくほっと息をついた。
蘇千瓷のこの反応は、自分自身を驚かせただけでなく、唐清をも驚かせた。
唐清の顔には明らかな戸惑いが浮かび、苦笑いしながら言った。「ただ君の様子を見に来ただけだよ。一人でここにいて、具合でも悪いのかと思って」
まさか、彼女をこんなに驚かせてしまうとは思わなかった。
蘇千瓷だけが知っていた。より恥ずかしいことに、彼女は唐清の顔に驚いたのだ。
蘇千瓷は頬を赤らめ、軽く咳払いをして言った。「大丈夫です。ありがとうございます、唐社長」
唐清はすぐに普段の様子を取り戻し、非常に優しくうなずいた。「それならよかった」
場の気まずさは、まだ解消されていなかった。
唐清の後ろにいた二人の男も、何となく居心地の悪さを感じていた。
唐清は何事もなかったかのように、蘇千瓷を見ながら言った。「今回は競り負けてしまいましたが、厲三少様は厲二少様に負けず劣らずの度胸がありますね。いきなり5倍の価格を出すなんて。私たちTLは及びませんでした。でも次回は、しっかり準備して競争させていただくか、あるいは協力させていただく機会があるかもしれません」そう言いながら、彼女に手を差し出した。
蘇千瓷は笑顔で立ち上がり、うなずいた。「楽しみにしています」
お互い挨拶を交わしただけで、唐清は笑顔を広げ、艶やかに言った。「では失礼します」
「体調が悪いので、お見送りは失礼させていただきます。お気をつけて」
唐清はうなずき、エレベーターの方へ向かった。
しかし振り向いた途端、顔から笑みが消え去った。
両腕を組み、互いに腕を強く掴んだ。
蘇千瓷!
唐清はエレベーターのボタンを押し、中に入ると、隣にいた男の一人に尋ねた。「見つかった?」
「まだです。メイドに外に出されたそうですが、薬も注射器も持っていないとのことです」と言いながら、携帯の時間を確認して言った。「もう限界でしょう。きっと戻ってくるはずです」
唐清の唇にようやく再び笑みが浮かび、エレベーターが止まると、ちょうど携帯が鳴った。
「唐さん、見つかりました。薬物中毒の発作が出て、体が激しく痙攣していました。道で発見され、少し言い含めただけで、耐えきれずに自分から戻ってきました」