第582章：またおじいさんに騙された！

蘇千瓷の見えないところで、その濁った老人の目に、計算通りの光が閃いた。

おじいさんは静かにため息をつき、「明日の昼に、この場所で彼と会う約束をしたんだ」と言って、枕の下から一枚の紙切れを取り出した。

蘇千瓷はそれを受け取り、西洋レストランの席番号と時間が書かれているのを見つけた。

昼の12時30分。

蘇千瓷はおじいさんに約束した後、自分の部屋に戻り、忘れないように昼の12時にアラームをセットした。

しかし、シャワーを浴びている時、突然罠にはまったような気がした。

この場面は、どこか見覚えがあるような。

でも、いつ経験したのだろう？

蘇千瓷の脳裏に馴染みのある光景が浮かんだが、それを掴むことができなかった。

シャワーを浴び、髪を乾かし、そのまま寝てしまった。

翌日、午前中ずっと忙しく、アラームが鳴るまでこのことを思い出さなかった。

背伸びをしながら、蘇千瓷は懐中時計を秘書にギフトボックスで包装してもらい、その合間にトイレに行き、BBクリームを首に塗り、髪の毛で隠し、見えないことを確認してから、懐中時計を持っておじいさんと戦友の孫との約束の場所へ向かった。

距離は想像よりも近く、蘇千瓷は10分早く到着した。

席に着くと、蘇千瓷は自分のためにフルーツジュースを注文し、人を待った。

7、8分ほど経って、蘇千瓷が退屈そうにジュースを飲んでいると、遠くからロイヤルブルーの人影が近づいてくるのが見えた。

その姿は少し痩せ型で、背が高く、肌が白く、縁なしメガネをかけ、ロイヤルブルーの菱形チェック柄のスーツを着こなし、高貴で爽やかな印象を与えていた。今、横を向いてウェイターと話をしていた。

蘇千瓷はその姿を見て、心臓が突然高鳴り、少し驚いた。

陸亦寒？

なぜここにいるの？

陸亦寒も彼女の視線を感じたようで、こちらを向こうとしたため、蘇千瓷は慌ててメニューで顔を隠し、心の中で苦笑した。

まずい……

こんなに運が悪いはずない。

今日は暦を見ずに出かけたのかしら？

こんな形で陸亦寒に会うなんて、この運の悪さは……もう最悪！

しかし、さらに蘇千瓷の予想を大きく裏切ったことに、陸亦寒はウェイターの案内で蘇千瓷の方向に歩いてきた。

「こちらがA2の特別席です、どうぞお掛けください」