第610章 私はあなたが好き

沈柔の顔色が微かに変わった。

宮澤離の言葉は途切れ途切れだったが、彼女にはその意味がよく分かっていた。

ずっと昔から、彼が自分のことを好きだということを知っていた。

ただ、彼女はずっと知らないふりをしていた。

彼もいくつかの理由で、ずっと告白できずにいた。

あるいは、彼が暗示を送ってきた時、分からないふりをしていた。

宮家と沈家は、門地が釣り合っている。

宮澤離の条件は、上流社會の同年代の中でも極めて良かった。

唯一の欠点は、彼が激情症を患っていることだった。

しかし彼は常に治療を続け、もう何年も発作を起こしていなかった。

彼が自分の気分をコントロールできさえすれば、激情症は発作を起こさない。

だから、あらゆる面から見て、宮澤離は理想的な結婚相手だった。

最も重要なのは、彼が本当に彼女のことを好きだということだ。

そして、これほど長い間その想いを持ち続けていた。

もし彼と結婚すれば、きっと幸せな生活が送れるはずだ。

これらのことは、彼女の心の中でよく分かっていた。

でも彼女が結婚したい相手は宮澤離ではなく、墨夜司だった。

彼がどれほど自分に優しくても、それは彼女の望むものではなかった。

だから、宮澤離に告白されたくなかった。一度関係が壊れてしまえば、彼を受け入れられない以上、お互いに気まずくなってしまう。

だからこの数年間、宮澤離の意図的な暗示に対して、ずっと分からないふりを続けていた。

宮澤離を受け入れることはできないが、彼の優しさを拒むこともできなかった。

なぜなら、彼は本当に彼女に対してとても優しかったから。

そんな優しさは、どんな女性も拒めないものだった。

お互いの関係をこのまま保ち続け、このように付き合い続けることができれば、それでいいと思っていた。

彼のことを、もう一人の兄のように思っていた。

しかし今、彼女の考えが少し揺らいでいた。

先ほど、宮澤離はお互いの間にある薄い紙を破ろうとしているようだった。

彼は……告白しようとしているようだった。

以前なら、すぐに話題を変えて、彼に口を開く機会を与えなかっただろう。

でも今回は……

もし以前のように知らないふりをすれば、これから先、宮澤離からの告白を待つことができるかどうかも分からない。