第611章 私を助けたから、私のことを好きになったの?

「どうしても言いたくないなら、言わないわ」

「あなたと司くんが一緒になれるなら、私は祝福するわ。でも今、司くんは既に結婚しているのに、あなたはまだ諦めきれない。もう、あなたが彼のことをどれだけ愛しているとか、どれだけ大切に思っているとか、聞きたくないわ」

「私に感情がないと思っているの?辛くないと思っているの?」

言い終わると、宮澤離は黙り込んだ。

沈柔も長い間黙っていた。

長年避けてきたことが、ついに暴かれてしまった。

「もういいよ、何も言わなかったことにしよう」数分後、宮澤離が先に口を開いた。「さっきの言葉は撤回する。聞かなかったことにしてくれ」

しかし、一度口に出した言葉を、聞かなかったことにするのは不可能だった。

それに、今回の沈柔は意図的に彼に言わせる機会を与えたのだ。

「全部聞いたわ。はっきりと聞こえたわ。どうやって聞かなかったことにできるの?」沈柔は瞳を揺らめかせ、驚いたような口調を装って、まるで予想外のことのように言った。「澤離、さっきの言葉は...本当なの?冗談じゃないよね?」

宮澤離は重々しい声で答えた。「こんなことで冗談を言うと思うか?」

「でも、どうして...」

「何がどうしてだ?」

「さっき、私のことを昔は妹のように思っていたって言ったわ」

「ああ、十年前は、お前を妹のように思っていた」

十年前...

沈柔は突然あの夜のことを思い出した。

彼女の心臓が「ドキッ」と鳴り、瞳が揺れ、思わず携帯電話を強く握りしめた。

「どうして...」彼女はもう理由が分かっていた。

「柔柔、十年前のあの夜を覚えているか?あの日は俺の誕生日だった。ある出来事で、俺たちは喧嘩をした。かなり激しい喧嘩だった。その後、俺は気分が悪くなって一人で裏庭に行き、不注意でプールに落ちてしまった」

「あの時、俺はまだ泳げなかった」

「水の中で必死にもがいて、助けを求めたが、誰も助けに来なかった。このまま死んでしまうと思った時、お前が現れて、俺を助け上げてくれた。目を開けた時、最初に見たのがお前で、お前が俺を助けてくれたと知った時、俺がどう思ったか知りたいか?」

携帯電話を握る指がますます強く、沈柔は表情を変え、唇を噛んだ。「どう思ったの?」