第616章 美色は人を惑わすものだ！

コンコンコン、ドアをノックする音が響いた。

墨夜司は顔を上げ、「どうぞ」と言うと、オフィスのドアが開き、魏徵が外から入ってきた。

まだ抱き合っている社長と若奥様を見て、彼の心の中は：……

これからは、墨社長はこうやって仕事をするのだろうか？

本当に、仕事の効率に影響がないのだろうか？

魏徵は数歩前に進み、嫌われない程度の距離を保って立ち止まった。

「墨社長、若奥様に関するネガティブな情報は全て削除し、関連する話題も規制しました。先ほどの調査で、あの世論操作と若奥様に関するトレンド入りは、全て同じサクラ会社による操作だったことが判明しました。」

「そのサクラ会社は業界最大手です。多くの芸能人のコメントやいいね、シェア、そして関連話題も、彼らから購入されたものです。既に調査員を派遣しましたので、若奥様を陥れようとした黒幕がすぐに判明するはずです。」

「ああ」墨夜司は頷いて、「今夜の会食があったよな？キャンセルして、都合の良い日に変更してくれ。」

魏徵：「……」

やっぱりこうなると思っていた。

若奥様がここにいれば、墨社長が接待なんて気にするはずがない。

ああ、美色に惑わされるとは、美色に惑わされるとは！

「はい、墨社長、すぐに連絡を取ります。」

恋愛に夢中で仕事に身が入らない社長に対して、協力する以外に何ができるだろうか。

墨夜司は指示を出し終えると、腕時計を確認してノートパソコンを閉じた：「もういい、当面の用件は終わりだ。退社しよう。」

魏徵は返事をして、自分が余計な存在だと分かっていたので、長居して嫌われるのも怖く、すぐに立ち去った。

墨夜司は喬綿綿を抱きながら立ち上がり：「ベイビー、今夜は何が食べたい？」

喬綿綿は笑顔で彼を見つめ、何気なく言った：「火鍋はどう？私と一緒に行く勇気ある？」

「火鍋」という言葉を聞いて、墨夜司は少し眉をひそめたが、それでも頷いて：「いいよ。」

喬綿綿は彼のその瞬間の反応を見逃さなかった。彼女は笑いを堪えながら：「本当に私と行くの？行きたくないなら、無理しなくていいよ。今度洛洛と一緒に行けばいいから。」

「無理なんかしていない。」墨夜司は手を伸ばして彼女の頬を軽く摘んで、「だんながいるのに、いつも友達を誘うのはどうかと思う。私より洛洛の方が大切なのかな。」