第618章 あなたは兄の意見を気にしているの？

言葉が落ちた瞬間、墨夜司は掌の中の柔らかい小さな手が引き締まり、彼の手をしっかりと握りしめるのを感じた。

彼が下を向いて見ると、きらきらと輝く黒い瞳と目が合った。隣の小さな女性が目を輝かせて彼を見つめており、その目には隠しきれない興奮と喜びが溢れていた。

そして...少しの緊張も。

「お兄...お兄さんが帰ってきたの？」章おじさんが墨時修が帰ってきたと言うのを聞いた時、喬綿綿は興奮で死にそうだった。

なんてこと。

じゃあ、もうすぐ墨時修に会えるってこと？

未来の大統領候補よ。

考えただけでも、すごく興奮する。

彼女は以前テレビや写真でしかこの人を見たことがなく、その時は墨時修のような地位の人は、自分とはあまりにも遠い存在だと感じていた。

遠すぎて、おそらく一生本人に会えることはないだろうと。

でも思いがけず...

突然、彼女は墨時修の義理の妹になった。

一生会えないと思っていた人が、突然家族になったのだ。

今、もうすぐ本人に会えるんだ。

喬綿綿は薑洛離のように大げさに墨時修を男神として崇拝することはなかったが、彼女のような一般人にとって、墨時修に一度会えるだけでも十分興奮することだった。

墨時修は彼女の男神ではない。

でも、どんな女の子だって未来の大統領候補に会うとなれば、冷静でいられるわけがない。

彼女の目には興奮と喜びが溢れ出ており、これから会えることをとても楽しみにしているのが見て取れた。

墨夜司はそれを見ているうちに、少し妬けてきた。

「うん」彼は淡々と答えたが、心の中では妬いていても表面には全く出さなかった。

「墨夜司、ちょっと緊張するわ」

本館の玄関の前に来て、ホールの明るい灯りを見ながら、喬綿綿は足を止め、墨夜司の手のひらを軽く握った。

墨時修は実際どんな人なのだろう。

日常生活でも、テレビで見るように厳格で付き合いにくい人なのだろうか。

「緊張することなんてないよ」墨夜司は可笑しそうに言った。「母さんとおばあさんにはもう会ったじゃないか？兄さんを怖がる必要なんてもっとない。確かに表面上は厳格そうに見えるけど、付き合いにくい人間じゃないよ」

「わかってる」喬綿綿は深く息を吸って、「でも、やっぱり緊張する。お兄さんは...あなたが結婚したことを知ってるの？」

「もちろん知ってる」