結婚を急かしているのはおばあさまだ。彼のおばあさまなのだから、どうしようもない。
「逃げ出せば問題が解決すると思っているの?」おばあさまは一層不満げになり、気難しい性格が出てきて、むっとして言った。「この話をするたびに、あなたは言い訳して逃げ出すわ。この年寄りがうるさいと思って、これ以上聞きたくないのでしょう。だったら、しっかりして早く孫の嫁を連れてきなさい。あなたが見つけてくれれば、もう二度と煩わせないわよ。」
墨時修:「……」
おばあさまの気分がやっと落ち着いたところだ。彼はもう一度お年寄りを怒らせたくなかった。
彼は無奈く笑いながら、優しく言った。「おばあさま、お嫁さんを見つけるのは、野菜を買うように簡単なことじゃありません。適当に選べるものではないんです。私が見つけたいと思っても、すぐに見つかるものではありません。」
「約束します。好きな人ができたら、必ずおばあさまに会わせに連れて来ますから、いかがでしょうか?」
墨時修は女性と恋愛することに興味はなかったが、一生独身でいようとは思っていなかった。
彼は独身主義者ではない。
ただ、結婚が人生の残りを誰かと共に過ごすことを意味するなら、好きでもない人と結婚したくないと思っていた。
人生は長い。妥協して過ごしたくはなかった。
たとえ最後は恋愛結婚でなくても、彼の妻となる人は、少なくとも好感の持てる女性でなければならなかった。
ただ単に嫌いではない女性というだけではいけなかった。
おばあさまは彼のこのような言い逃れの言葉をもう信じなくなっていた。
何年も催促してきたが、この長孫は毎回同じことを言うばかり。
でも女の子を家に連れてきたことがあるだろうか。
ない、一度もない。
むしろ次男の方は、何も約束したことがなく、期待もしていなかったのに、黙々と孫の嫁を連れてきた。
「もういいわ、もういい。」おばあさまも心の中では分かっていた。この二人の孫は共に意志の強い人間で、結婚を強制しようとしても、絶対に成功しないことを。
些細なことでは彼女の言うことを聞くが。
大事なことは、自分で決める。
結婚を急かすというより、むしろ彼に気付かせたいだけだった。
この長孫が仕事ばかりに没頭せず、時には伴侶を探すことも考えてほしいと願っているだけだった。