第629章 これは本気で恋をした兆し

「うちの綿綿はこんなに良い子で、こんなに愛らしいのに、おばあさんがあなたを可愛がらずに誰を可愛がるの？」おばあさまは薬を飲み終わり、喬綿綿にあやしてもらうと、気分が随分と落ち着いて、喬綿綿の手を優しく叩きながら穏やかな声で言った。「さっきあなたの姑が言ったことは、決して気にしないでね。おばあさんの心の中では、あなたはもうおばあさんの実の孫みたいなものよ。彼女も誰かから噂を聞いて、その噂を深く信じ込んでしまったから、あんな馬鹿げたことを言い出したのよ。」

「頭が冴えてくれば、自分の過ちに気付くでしょう。」

「おばあさま、ご心配なく。」喬綿綿は頷いて、笑顔で言った。「分かっています。気にしませんから。」

「それならよかった。」おばあさまは満足そうに言った。「家族は仲良く暮らさないとね。溝ができてしまったら良くないわ。」

「おばあさま……」

おばあさまの優しく親切な様子、穏やかな声で話しかける姿を見ていると、喬綿綿の目が熱くなり、思わず目が赤くなってしまった。

彼女は自分の祖母のことを思い出した。

記憶の中で、祖母も彼女にこんな優しい声で話しかけていた。

「まあ、この子ったら目が赤くなって。辛かったの？」彼女の目が赤くなるのを見て、おばあさまは心配で、急いで優しく慰めた。「いい子だから、もう泣かないで。おばあさんは分かっているわ、あなたが辛い思いをしたのね。安心して、おばあさんがすぐにあなたの仕返しをしてあげるから。」

おばあさまにこう慰められ、喬綿綿の目はさらに赤くなり、鼻も更に酸っぱくなった。

うぅぅ。

彼女は自分に何の価値があって、こんなにもおばあさまに気に入られているのか分からなかった。

おばあさまがこんなにも優しくしてくれる。

彼女の目が赤くなるのを見て、墨夜司は眉をひそめ、彼女が辛い思いをして泣いているのだと思った。

彼はすぐに手を伸ばして彼女の目尻の涙を拭い、優しく慰めた。「本当に辛かったの？じゃあ、後で僕も仕返しをしてあげようか？泣かないで、君が泣くと僕も辛いんだ。」

「私、辛いから泣いているんじゃないの。」

喬綿綿は啜り泣きながら言った。墨夜司が服の袖で彼女の目尻の涙を拭いてくれたばかりなのに、また涙が流れ落ちた。

しばらくすると、彼のシルバーグレーのワイシャツの袖口は、彼女の涙でびっしょりになっていた。