墨奥様は涙とよだれを垂らしながら、沈柔と電話で話していました。「柔柔、あなたの言う通りよ。あの女は本当に腹黒いわ。おばあさまは今、彼女のことをとても気に入って、まるで実の孫娘のように可愛がっているの。他人が何か言おうものなら許さないわ」
「おばあさまが彼女を庇っているから、私という姑のことなど眼中にないのよ」
「このままじゃ、もう少ししたら、この家で私の立場なんてなくなってしまうわ。嫁が私の頭上に乗るようになるのよ」
向こうで何か言ったようで、墨奥様は聞きながら表情がますます暗くなり、目からの涙も増えていきました。
「今は誰も私の言うことを信じてくれないの。私が無理難題を言っているって思われているわ。司くんに至っては彼女に夢中で、彼女の味方ばかりして、少しも疑うことをしないの。やっぱり、こういう庶民出身の女は手強いわ。頭の中は打算ばかりで、手口も巧妙よ。司くんは仕事では優秀で、同年代で彼より優れた人を見つけるのは難しいけど、恋愛面では損をしているわ。経験が全くなくて、そんな腹黒い女に騙されてしまったのよ」
「こんなに優秀な息子が、どうしてこんな女に騙されてしまったのかしら」
「柔柔、あなたが私の嫁だったら、どんなに良かったことか。墨おばがどれほど喜んだことか」墨奥様は言いながら、涙を拭っていました。
携帯電話から、優しい声が聞こえてきました。「墨おば、もう泣かないで。体を壊してしまったらどうするの。でも、これは私一人が望んでもどうにもならないことですし、私ももちろん...墨おばの嫁になりたかったけど...でも...司くんは私のことをそういう目で見ていないし、お祝いする以外に何ができるでしょう」
「実は、喬綿綿にも彼女なりの良いところがあるはずです。そうでなければ、どうして司くんがそんなに彼女のことを好きになったのでしょうか。墨おばが彼女を受け入れようと努力すれば、思っているほど悪い人じゃないと分かるかもしれません」
「私は絶対に彼女を受け入れないわ!」
沈柔の慰めの言葉は効果がないどころか、かえって墨奥様の怒りを煽ることになりました。彼女は冷ややかに嘲笑して言いました。「彼女に何の取り柄があるというの、ただあの顔で私の息子を惑わしているだけよ。出身が良くないのはまだしも、あの映像学院なんて所に通って、これから役者にでもなるつもりなの?」