第662章 実の兄を陥れる

「バン」という音と共に、唐煒雍は机を叩き、怒りを露わにした。「とんでもない、まったくとんでもない。女は適当に寝るものじゃない！」

唐馨蕊は息を飲んで怖気づいたが、心の中では喜んでいた。なぜなら、彼が学問に励まず、トラブルを起こせば起こすほど、父に見放され、唐家の未来は彼女の手に落ちることになるからだ。

彼女が情け容赦ないと言われても仕方がない。男尊女卑の中で育ってきた彼女は、兄が幼い頃から甘やかされすぎて今のような人間になってしまったことを知っている。もし兄が救いようのない阿斗にならなければ、父は彼を見放すはずがなかった。

兄がほんの少しでも分別があれば、能力がなくても、父は彼に期待をかけ続けただろう。

そして彼女は、女だというだけで重視されず、すべてが兄優先だった。だからこそ、自分を証明しようと必死に勉強し、兄が追いつけないほどの実力をつけ、唐煒雍の注目を集めようとしたのだ。

唐新傑、つまり唐馨蕊の兄は、一度や二度ではなく彼女にお金を要求してきた。以前は少額なら与えていた。彼を堕落させるためだ。しかし今回の百万元は、当然与えるわけにはいかなかった。

実際には出せないわけではなかったが、唐煒雍に息子がいかに金遣いが荒いかを知らせる必要があった。唐煒雍は今では唐新傑を見放しているが、万が一のために、それを知らせておく方が良いと考えたのだ。

「カードに百万元振り込むから、後で彼に送って、大人しくするように警告しておけ」唐煒雍は怒っていたものの、息子の存在を完全に無視するわけにもいかなかった。

「はい」唐馨蕊は表情を変えずに答えたが、心の中では皮肉と失望を感じていた。

皮肉なのは、唐煒雍が彼女に唐新傑を諭すように言ったことだ。警告が効くなら、彼は今のような状態になっていないはずだ。

失望したのは、唐煒雍が怒っていながらも、唐新傑の非を追及しなかったことだ。それだけでなく、唐新傑には百万元を与えて問題を解決させるのに、彼女には数万や十万も与えず、自立のための訓練だと言い訳するのだ。

実際のところ、彼女は分かっていた。唐煒雍は将来唐家を継がせると言ったが、それはまだ遠い先の話で、その間に何が変わるか分からない。

彼女はいつも、自分が利用されているだけのような気がしていた。