217 憐れみの心

慕傾城の容姿は、過去も現在も国色天香と言えるほどだが、慕婉柔は彼女の美貌とは程遠く、小指一本にも及ばないほどだった。

そのため、慕婉柔が成人したとき、慕晟は再び彼女のDNA鑑定を行った。

しかし、慕婉柔はどこからかこの件を知り、慌てて遺伝科の人間を買収し、こっそりと鑑定報告書を改竄した。慕晟はそのことに気づかず、ただ慕傾城の美貌が受け継がれなかったと思い込んだ。

しかし、この件について慕雅哲は知っていた。彼は慕婉柔よりも先に、誰にも気づかれることなくその鑑定報告書を入手し、慕婉柔の偽の身分についても早くから知っていたのだ。

哀れな慕婉柔、一時の聡明さが、一生の愚かさとなってしまった。

彼女は、簡単な改竄だけで天衣無縫の計画を立て、自分の身分を最後まで隠し通し、華々しく千金お嬢様として生きていけると思い込んでいた。

しかし、彼女は全く知らなかった。慕雅哲がどのような人物であるか、彼が生まれてこのかた、名家の腥風血雨の中を一歩一歩慎重に歩んできたことを。

権力、富、争奪、陰謀渦巻く世界で、彼が目にしてきた策略は、慕婉柔にはおそらく表面すら理解できないだろう。

慕晟は確かに年を取った。老獪で、薑は老いるほど辛いと言うが、彼のような年齢になると、もはや老獪さも失われ、朽ち木のように衰え、老いての混乱は避けられない。

しかし、彼はまだ老いていない。慕婉柔は慕晟を計算に入れることはできても、慕雅哲の頭上には計算が及ばない。

一人の慕婉柔くらいでは、彼が動く理由にはならない。

彼はずっと疑っていた。慕婉柔の背後には、どのような驚くべき陰謀が隠されているのか、これが彼が動かない理由でもあった。

慕おじいさまはもう年を取っていて、名目上は依然として帝昇財團の会長であり、最大の株式を握っているが、今では身を引き、財團のすべてを最も信頼する嫡孫に託し、安らかに余生を過ごしている。

しかし、やはり年齢が高くなり、余命もそう長くはない。そのため、彼が持つ財團の継承権を狙う者が出てくるのは避けられない。

確かに、慕雅哲は正当な後継者であり、慕おじいさまが指名した未来の慕家當主だ。しかし、慕おじいさまが承認しても、慕家の他の人々が黙って見ているとは限らない。