薛夕は彼女を無視し、化粧ポーチを開けて、中から手洗い液を取り出した。
その金持ちの子は一瞥した後、眉をひそめた。「あなたのそれ、ラベルが全然ないじゃない?」
薛夕も自分の手にあるシンプルな包装のスキンケア製品を見た。
実際、葉儷が彼女のために用意したものは、とても良いものだった。ブランドはすべて火苗ごごうがアメリカの空港から帰ってきた時に買ってきたものだった。
ああ、この金持ちの子が使っているブランドとほぼ同じだ。
でも彼女はその日、向淮の肌がきれいだったので、何のスキンケア製品を使っているのかと聞いてみた。すると、向淮はすぐに一セット持ってきてくれた。
このスキンケアセットは、すべて白い陶器のボトルに入っていて、ブランド名はなく、ただ上に手書きのラベルが貼られていて、どれが乳液で、どれがクリームかが書かれていた。
薛夕は向淮からもらったものだと思ったので、そのまま使うことにした。
一ヶ月使ってみたが、特に問題はなかった。
薛夕は少量の手洗い液を絞り出して手を洗い始めた。彼女は何も言わなかったが、その金持ちの子は続けて言った。「いや、同級生、ブランドのないものは適当に使っちゃだめよ。特に顔に塗るものは。私たち女の子は慎重にならないと。ほら、私のを使う?」
彼女は自分のスキンケア製品を差し出した。
薛夕:?
彼女はようやくこの人を見た。そんなに嫌な人ではないのかもしれないと思った。
この人は身長がそこそこ高く、肩まである長い髪をビッグウェーブにパーマをかけていた。容姿は中の上くらいで、おおらかな性格は秦爽に少し似ていたが、おしゃべりさんほど浅はかではなかった。
薛夕は彼女の学生証をもう一度見た。そこには「応用数学科、李紫夏」と書かれていた。
薛夕は視線を戻し、手を洗い終えて、寮の部屋に向かって歩き始めた。冷たい二言を残して:「結構です。」
彼女がこんなに冷たいのを見て、李紫夏は彼女の後ろについていった。薛夕がスーツケースを開けて、自分のベッドに物を整理し始めるのを見た。
華夏大學の寮の環境は、間違いなく最高だった。
4人部屋で、ベッドは上がベッド、下が机とクローゼットというデザインだったので、誰が上段で誰が下段で寝るかという争いもなかった。