第590章 X氏!

薛夕は直接答えず、反問した:「彼女に何か用?」

鄭直は几帳面に答えた:「彼女を特殊部門に招きたいんだ」

薛夕は少し戸惑って:「……え?」

鄭直は続けた:「彼女のような人材は、必ず特別採用しなければならない。特殊部門の門は彼女に開かれている。特殊部門の人間が、みんなお前のように縁故採用でないなら、特殊部門は無駄飯食いの集まりになってしまうじゃないか?」

「…………」

薛夕は口角を引きつらせ、まだ言葉を発する前に、鄭直がまた口を開いた:「もういい、Xの連絡先を私によこせ。私が直接連絡を取る。お前に彼女を勧誘させたら、うまくいかないだろうからな!」

薛夕:「……ああ」

鄭直は言った:「すぐによこせ、切るぞ」

薛夕は彼が電話を切る前に、口を開いた:「ちょっと待って」

鄭直は一瞬驚いて:「何だ?」

薛夕は冷淡に答えた:「今夜は暇がない」

そう言って、彼女は電話を切った。

夜にネットワーク部の手伝いに行けというの?

その時間があるなら、本を読んだ方がいいじゃない?彼女はマゾヒストじゃないし、特殊部門に入ったのは顧雲卿を抑制するためだけ。今や顧雲卿は好き勝手できなくなったんだから、なぜまだこんな苦労をしなければならないの?

彼女は戦いごとが一番嫌いだし、事件解決なんかも好きじゃない。本を読んで研究して一生懸命勉強する方が楽しい。

鄭直が特殊部門から退部させたいなら、それでもいい。

薛夕はそう考えながら、座って本を開いた。今回彼女が読んでいる本は『集積回路』に変わっていた。

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特殊警察部。

鄭直は景飛のオフィスにいた。さっき景飛から奪った薛夕の電話番号で、今電話の「ツーツーツー」という音を聞いて、鄭直は呆然としていた。

彼は信じられない様子で景飛を見て、口を開いた:「彼女が、彼女が私の電話を切るなんて?」

景飛は椅子に寄りかかって:「ボスだって彼女に電話するときは慎重だよ。お前の電話を切ったところで何が珍しいの」

鄭直は怒った:「私はボスじゃない。彼女を甘やかすつもりはない!それに、今夜は暇がないから来ないだって?この人は本当に目に余る!だめだ、こんな人間は特殊組織から除名しなければ。お前が報告書を出せないなら、私が出す!」