この時、薛夕と岑白はホテルの入り口で別れを告げ、それぞれ別々の道へと向かった。
レストランは華夏大學に近かったため、薛夕は歩いて学校へ戻ることにした。道中、周りの人々が彼女を見つめ、その美しさに目を奪われているのに気づいた。
薛夕は真っ赤な髪をしており、学校でも目立つ存在だったので、特に気にしなかった。
しかし、学校に着くと、鄭直と景飛が数人を連れて、門の前で何かを小声で話し合っているのが見えた。彼らを見た薛夕は眉をひそめ、無意識に華夏大學を見つめた。
また超能力者による犯罪が起きたのだろうか?
超能力者は一般人よりも優秀で、華夏大學に入学しやすい傾向にあるため、京都華夏大學の超能力者の割合が高いのは当然のことだった。
特殊部門の一員として、彼女は足早に近づいていった。
彼女が近づいた時、ちょうど景飛が人員配置を終え、他のメンバーは学内に散っていった。薛夕は声をかけた。「小飛鳩ちゃん」
景飛は振り返り、彼女を見て目を輝かせた。「夕さん!」
鄭直は鼻を高くし、傲慢な態度で「ふん」と言った。
薛夕は彼らが景飛にだけ挨拶して、自分を無視したことに気づいた。一般人のくせに、何が偉そうなのだ!
薛夕は再び鄭直を無視し、景飛に尋ねた。「どうしたの?事件?」
景飛は彼女に手を振り、声を低くして話し始めた。「はい、情報によると、今夜M国のスパイが光源機の核心ファイルを盗みに来るそうです。だから、ここで潜伏して、彼らを捕まえるんです!」
薛夕:?
光源機の核心ファイル?
これは彼らの研究室のものではないか?
彼女は少し戸惑いながら「私に手伝えることはある?」と聞いた。
彼女のものを盗もうとするなんて、相当な度胸だ!
しかし鄭直は嘲笑うように言った。「お前みたいな一般人に何ができる?さっさと離れていろよ。邪魔になるだけだ。逮捕する時に、お前を守る余裕なんてないんだからな!」
薛夕:「…………」
彼女は黙ったまま鄭直を見つめ、突然一歩前に出て、鄭直の肩をつかみ、横に回転させて地面に投げ倒した!
鄭直:?
彼は急いで地面から立ち上がり、服についた埃を払いながら怒鳴った。「薛夕、何をする!」
薛夕:「……一般人でもお前を倒せることを教えてあげただけよ」
鄭直:「……」